釜山国際映画祭を訪れた『血と骨』の崔洋一監督

 日本で活躍している在日韓国人2世の崔洋一(チェ・ヤンイル/55)監督が、第9回釜山(プサン)国際映画祭を訪れた。同監督が出品した作品は『血と骨』。「アジア映画の窓」部門に出品され、9日に釜山劇場で上映されたのをはじめ、11日午後7時30分からメガボックス5でも上映される予定だ。

 「釜山映画祭に集まった若い観客を見ていると羨ましくなります。96年の第1回の時に観た林順礼(イム・スルレ)監督の『三人の友達』が最も記憶に残っています。韓国映画の発展には驚いています。日本では大御所監督が映画界を率いている一方で韓国では若い監督が中心になって引っ張っているので未来が明るいです。最近観た映画の中では朴賛郁(パク・チャヌク)監督の『オールド・ボーイ』と金基徳(キム・ギドク)監督の『悪い男』が印象的でした」

 崔監督の言葉からも分かるように彼の好きな映画はアウトサイダーを描いたものだ。自身の作品でもアウトサイダーを中心に描いてきた。今回の映画も1923年に日本で一旗揚げようと18歳で済州(チェジュ)島から大阪にやって来た金俊平(キム・ジュンピョン)という男の生涯を描いた。

 「私はアウトサイダーの話しに関心が高いです。自分自身も境界線スレスレのところを生きてきたと思います」

 映画監督で人気コメディアンの北野武が主演を務め、興行面でも期待されている。日本での試写会でも反応が良かったと話す崔監督は、宮崎駿監督とウォン・カーウァイ監督の映画と同じ時期に公開されるため心配だとも語った。

 「北野さんは長年の友人です。私のデビュー作『十階のモスキート』にゲスト出演もしました。今回の映画は彼を念頭に置いてシナリオを書きました。原作で主人公は巨体の男で描かれていますが、北野さんは体が大きくありませんが独特の狂気を孕んだ役を演じてくれました。彼がいなかったらこの映画は作れなかったでしょう」

 観客が『血と骨』を観て何を感じてほしいかと聞くと「私の映画を観れば一週間は苦痛が続くだろう」としながら、「1800円のチケット代も惜しくないはず」と自信を語った。

 東京朝鮮中高級学校を卒業して映画の世界に飛び込んだ崔監督は大島渚監督の『愛のコリーダ』の助監督を務め、大島監督から演出の指導を受け、10年以上にわたる現場での経験を経て1983年に監督デビューした。

 その後『月はどっちに出ている』『犬、走る DOG RACE』『マークスの山』『刑務所の中』『花のあすか組!』『友よ、静かに瞑れ』『いつか誰かが殺される』『クイール』など20本を超える作品を手がけ、今年8月には日本映画監督協会の理事長に選ばれた。

 大島渚監督に受けた影響を問うと「映画を学んだ記憶はなく、酒の飲み方と人の付き合い方だけを学んだ」と答え、「脳梗塞で倒れたが今は回復して私の映画を観るために試写会場にも訪れた」と近況を語った。

 崔監督は今回のインタビューに際して「必ず自分の映画を観てから質問をすること」「在日韓国人に関する質問をしないこと」という2点を注文した。

 崔監督は朝鮮(北朝鮮)国籍を持っていたが韓国籍に変え、今年2月に文化学校ソウルと韓国シネマテック協議会が開催した回顧展に出席するためソウルを訪れた際に「理念の問題を越えて朝鮮国籍で生きて行くのが不便だったから国籍を変えた」と答えた。

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