【音楽コラム】韓国音楽市場の厳しい現実

 1990年台のダンスブームは、音楽の本質を奪っただけではなかった。この頃から“ビルボード世代”が音楽を聴かなくなり始めた。“ビルボード世代”とは80年代、毎日のように深夜ラジオに耳を傾け、頭の中には受験生のようにビルボードの順位がインプットされていた世代のことをいう。

 この“ビルボード世代”がアルバムを買わないようになったことが、韓国アルバム市場停滞の最大の原因といえる。

 音楽に熱中したこの世代は最近の音楽に対して「聴きたいと思うような音楽がない」と口を揃える。

 「確かにその通りだ」。歌手のプロモーションの場になってしまったテレビの音楽番組は、大手芸能プロダクションに所属する歌手ばかりを出演させる。ラジオも同様にいくつかの番組を除いては、国内のダンスミュージックやバラードにくだらないトーク一色となってしまっている。

 しかし、何が良い音楽なのか、どこでその音楽を聴くことができるのかさえも分からなくなっている。“ビルボード世代”は新たにリリースされたアルバムを聴かず、過去のレコードやカセットテープばかりを聴いている。

 国際音盤産業協会(IFPI)はアルバムのセールス量によって「ゴールド」や「プラチナ」といった等級分けをしている。1枚のアルバムが特定量以上の枚数を販売した場合にこうした名称が付けられ、マーケティングの手段として使用される。年間のゴールドとプラチナの数でその国の市場規模も把握する。

 ところがこうした「ゴールド」や「プラチナ」の基準が国によって異なる。IFPIは最近、韓国のゴールドとプラチナの数をそれぞれ1万5000枚と3万枚に下方修正した。この制度が初めて韓国に導入された当時は、ゴールドが5万枚、プラチナが10万枚だった。

 しかし、通貨危機以降は3万枚と6万枚に減り、今回はさらにその半分にまで減った。米国がゴールド50万枚、プラチナが100万枚、日本が10万枚と20万枚であるのと比べ、いかに規模が小さいかが分かる。

 テレビではまず流れないような海外アーティストの曲にはやはり魅力がある。“ビルボード世代”であれば、誰もが好きになるであろう英国のバンド「Keane」のアルバムが3500枚しか売れていないという現実を見れば、30代以上の最近の音楽に対する失望も相当部分が偏見であるようだ。

韓賢祐(ハン・ヒョヌ)記者 hwhan@chosun.com
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