過去の英雄をレンズを通して描いた『風のファイター』

 最近、実存の人物や実際の歴史に基づいた映画を制作する監督らの間で共通となっているキーワードは「考証」ではない。彼らは過去というレンズを通して過去と対話をする。だから最近のキーワードは「解釈」なのだ。『風のファイター』はフュージョンという言葉を用いて過去の“英雄”との対話を試みる。

 日本で極真カラテを創設した崔倍達(チェ・ペダル/本名:崔永宜(チェ・ヨンイ)/日本名:大山倍達/1922~1994)の生涯を描いた映画『風のファイター』は、原作漫画の豊かな想像力をどう脚本するかが課題だった。

 監督は速い画面展開とヒップホップの曲でコンテンポラリー的な印象を与える。古典的な武侠ストーリーが基本となっているため新鮮な印象に期待するのは難しい。

 監督は心だけは熱く、実戦では恥を味わうしかなかった見窄らしい英雄にトーナメント形式での修練過程を与え、観客の感情に熱いものを訴えかけようとした。アクション映画ファンのアドレナリンが分泌されるのは、まさにこういった瞬間なのだ。

 主演が歌手の「ピ」から梁東根(ヤン・ドングン)に変わったのは、結果的に映画を傷つけずに済んだと言える。

 身長の低い梁東根の動きは極真カラテの生動感ある武芸の印象をより深いものにする。

 ストーリーがありきたりで、ヒロインとの恋愛があまりにも上辺だけで過度にクローズアップし過ぎているといった感も否めないが、やはり歴史上の人物を扱っていながらも、そういった点を感じさせないのがこの映画の最大の特徴だろう。12日公開。

パク・ウンジュ記者 zeeny@chosun.com
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