4人組バンド「ブルドッグマンション」の2ndアルバム『Salon de Musica』に対する期待は、他のメンバーには申し訳ないが、リーダーを務めるイ・ハンチョルの新しい音楽に対する期待と一致する。
イ・ハンチョルはソテジが大ブレイクした当時に登場し、大手プロダクションに所属するH.O.Tやピンクルといったグループが活躍していた頃、ブルドッグマンションを結成した。音楽業界の不況が一方で喜ばれているのは、経済力にものを言わせて作ったバブリーな音楽が下火になり、イ・ハンチョル(ブルドッグマンション)のようなスタイルの音楽が脚光を浴びるようになってきたからだ。
1994年に大学歌謡祭で『皮を破って』という曲で大賞を受賞したイ・ハンチョルは、ソロアルバム2枚とプロジェクトアルバム『ジッパー』をリリース、2000年にチョ・ジョンボム(ドラム)、ソ・チャンソク(ギター)、イ・ハンジュ(ベース)と共に「ブルドッグマンション」を結成した。その間にも『私たちは空を飛んだ』といった名曲も手がけた。
「ブルドッグマンション」は2000年にミニアルバムをリリースした後、一昨年にファンクに対する愛情を表現した1stアルバム『FUNK』をリリースした。そして今回リリースされたアルバムはラテンのリズムが満載だ。真っ赤なジャケットからは南米の照りつけるような太陽を想像させる。
「去年の4月にヨーロッパ旅行に行ってきました。その時、スペインで耳にしたラテンのリズムから自由奔放な雰囲気を全身で感じました。メロディーではなく、リズムとハーモニーでも人の心を動かすことができるんだと感じました」
帰国後イ・ハンチョルはさっそく作曲をはじめ、メンバーと共に練習を重ねながらアルバムに収録する曲を選んだ。実際に選曲をはじめると、ラテンのリズムを使った曲ばかりを選んでいた。
「ラテンの曲は本当に演奏が難しいです。普通のロックのように演奏をしたら、本当にぎこちなくなって楽しめないんです。リズムに乗って楽器と共に体が自然に動くようじゃないとだめなんです」(チョ・ジョンボム)
イントロとなる1曲目はダイナミックなオーケストラの演奏でアルバム全体の雰囲気を予告し、続く『Life Is』は今までにはなかった短調のメロディーと「成功したという友達の葬式に行ってきた。夜通し泣いたさ…」という歌詞で気持ちをダウンさせる。
しかし、3曲目の『恋は欧羅巴から』からは雰囲気が一転する。フレアのジーンズをはいたラテンダンサーが踊る姿が想像できるこの曲は、どことなく古臭くてエロティックな感じのメロディーながらも、スウィングするリズムについ体が動いてくる一曲だ。
『彼女の話』はイ・ハンチョル自身が「初めて声をバイブレーションさせて歌った」と言うほどに愛着を持った曲。80年代のダンスクラブの“ブルースタイム”で耳にしたことのあるようなスローテンポの曲。続くリードトラックの『El Disco Amor』は、ベネズエラのバンドの曲にハングルの詩を付けた一曲。ディスコスタイルやアシッドジャズの要素を加えたこの曲は、この夏にぴったりのナンバーだ。
その他にもチャチャチャのリズムやルンバなど、さまざまなラテンのリズムにジャズ好きなイ・ハンチョル独自のメロディーが加わり、1枚でさまざまな雰囲気を味わうことができる。アルバムを通して聴いてみると、何とも感謝したくなる気持ちになる。これほどすばらしいアルバムが聴くことができるなんて、どれほど幸せだろうか。