SBSの週末ドラマ『パリの恋人』が3日(第7話)の放送で40.5%の視聴率を記録した。多くの視聴者に支持された同局が同時間に放送したドラマ『バリで起ったこと』でも記録できなかった高視聴率だ。
「財閥の御曹子」(朴新陽(パク・ シニャン)扮すギジュ)と「痛みを内に秘めている反抗的な男」(イ・ドンゴン扮すスヒョク)は、視聴者を惑わす力強い男性のパワーを放っている。
“パリジェンヌ”や“ギジュ・マニア”といった言葉まで登場した、よくありがちなシンデレラ物語から出発したこのドラマは、中盤に差し掛かりながら青年失業時代を迎えた現代に合った特別な男性ファンタジーへと変わる。
多くのものを得たが心の傷も多い二人の男性登場人物は、女性の視聴者を魅惑する“王子様”であると同時に多くの一般男性たちにも憧れと希望を呼び起こさせ、顔をほころばせる安定剤のような存在だ。
▲変身する王子様、そしてシンデレラ
魅力の中心は“世間知らずの王子様”にある。『バリで起ったこと』のチョ・インソンがそうだったように、朴新陽は“円満な関係”や“本当の愛”を知らない財閥の御曹子。サウナで「これを着なければならないのか?」と言いながら困ったような姿を見せ、「愛って何だ?大きな傷を与えないために小さな傷を与えることが愛なのか?」と人に聞くほどに世間知らずな面があまりにも多い。
ヒロインの貧しさはむしろ“個性”としてドラマの展開で積極的に活用される。 『バリで起ったこと』でハ・ジウォンがそうだったように、『パリの恋人』のキム・ジョンウンも必要であれば経済的な援助も積極的に要求する。『パリの恋人』は「世間知らずの王子様」と「生活力のあるシンデレラ」という相反するものを融合させながら、多くの視聴者たちに貧しいことが決してマイナスの面だけがあるわけではないと主張する。
こうしたドラマの“幻想”を真剣に批判したり、「世の中のどこにそんな話しがあるのか?」と青筋を立てるのなら、むしろチャンネルを他に回すのが賢明な態度だろう。
▲白馬に乗った王子様の花柄ネクタイvs反抗的ボヘミアンの穴だらけのジーンズ
撮影現場で会った朴新陽は「問題が起こればすぐに解決してくれ、危機に瀕すればすぐに現れてくれるのがギジュの魅力」と自ら分析した。さらには決定的な瞬間に温かいユーモアを見せて人間臭さを感じさせる。
一方のイ・ドンゴンが演じるスヒョクは反抗的なボヘミアン。家を出て全世界を放浪しながらどの場所にも定着することができない孤独な人物。イ・ドンゴンは「スヒョクは表面は明るいが悲しみと痛みを内に秘めている人物」と分析する。
二人の“王子様”は服のスタイルからして相反している。朴新陽のユニホームはストライプのジャケット。これに幅が広く結び目の太いネクタイと同じ柄のハンカチが“王子様”のキャラクターを際立たせている。
イ・ドンゴンはオーバーサイズのTシャツにジャケット、そして穴だらけのジーンズといったヒッピースタイル。裾が擦れて糸屑がむき出しになったジーンズや長年着て色の褪せた服、ドラムスティックの入った肩掛けかばんといったアイテムが、イ・ドンゴンのファッションを完成させる。
しかし、二人は互いの隙間を埋め合う存在でもある。朴新陽がイ・ドンゴンの面倒を見ることや、イ・ドンゴンが心を開く唯一の人物が朴新陽であるという点にヒントがある。月曜日から金曜日までは朴新陽(ギジュ)、週末にはイ・ドンゴン(スヒック)のように過ごすということだ。今月から週休二日制(現実にはこれからだが)になった韓国の平凡なサラリーマンが心に抱くファンタジーがそこにはある。
▲「ベイビー行くよ」「この中に君がいる」
二人の台詞はすでに“語録”にもなっている。キム・ジョンウンがカフェで絡まれた第4話のワンシーン。その場に現われた朴新陽が放った「うちのベイビーが驚いているのが分かりませんか?さあ、ベイビー行くよ!」という台詞は、ポータルサイトの人気検索語となった。単語ではない文章が人気語になったのは今までにない新たな現象だ。
イ・ドンゴンは第6話で逆襲に出た。キム・ジョンウンの手を自分の胸に引き寄せ「この中に君がいる」と告白した。そして「君の心の中には誰がいるか分からないが、俺の心の中には君しかいない」と言い放つ。
ある視聴者はホームページの掲示板に「最高の形での愛の告白」と書き込んだ。女性たちが男性に対して抱くファンタジーのすべてがこの二つの台詞に要約されている。