カンヌ受賞の偉業を成し遂げた朴賛郁監督インタビュー

 「監督!おめでとうございます!」

 街中ですれ違った市民たちも監督の偉業を称える。今年のカンヌ国際映画祭でグランプリ(審査員特別大賞)を受賞した『オールド・ボーイ』の朴賛郁(パク・チャヌク)監督(41)だ。

 先週、第3回国際文化専門家団体ソウル総会(CCD)の参席者として招待を受けた大統領府での晩餐会から帰って来た監督にインタビューした。

-最近、各方面から招待を受けることが多いのでは?

 「そうですね。女子中学生死亡汎国民対策委員会の2周忌集会には必ず行きたかったのですが、短編オムニバス映画『スリー、モンスター』の後半作業のために参加することができませんでした」

-どこへ行っても有名人なのでは?

 「何かを食べに行けばデザートをサービスしてくれたりもしますね。たった一本の映画で受賞しただけなのですが、多くの方々が喜んでくれています」

-産業的にも大きな成果を収めた『オールド・ボーイ』の受賞は、カンヌ国際映画祭に対する固定観念を壊したという側面もあるようですね。

 「大衆的なジャンルの映画でも受賞することができるということを確認したとでも言いましょうか、ヨーロッパの映画人たちは暴力がアジア映画の美学の最大の特徴と思っているようです。『オールド・ボーイ』が現代を背景にした映画であるのに加え、暴力的な要素が強いのが韓国映画やアジア映画を見るヨーロッパの映画人たちの観点と上手く一致したようです。カンヌ国際映画祭が新たに変わろうとしていたことも影響したようです。すべてが運です。タイミングが常に重要なのです」

-カンヌで最も感激的だったことは?

 「『オールド・ボーイ』の名前が読み上げられた瞬間、立ち上がって崔岷植(チェ・ミンシク)さんと抱き合った時です。『オールド・ボーイ』の公式上映でレッドカーペットの上を歩いた時も感激的でしたね。映画を撮りながら大変だった時に必ず崔岷植さんが私の味方になってくれました。内心、崔岷植さんが主演男優賞を受賞すればと願っていました」

-審査委員長を務めたクエンティン・タランティーノが受賞に決定的な役割を果したという声もありますが。

 「今回の受賞でタランティーノの影響力を誇張した一部の見解は、残り7人の審査委員に対する侮辱だと思います」

-『オールド・ボーイ』は近親相姦を扱った内容にもかかわらず、予想に反して公開当時から韓国では何の論争も起こらなかったが。

 「近親相姦というものが何しろデリケートな問題なので、そのこと自体に触れることを避けたのではないでしょうか。今日の晩餐会で盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が、家に『オールド・ボーイ』のDVDがあるから見ようとしたら息子さんに『父さんは見ないほうがいい』と言われたと話されていました(笑)。実際にはかなり際どい内容なのですが、それを性的な視点で描かなかったことを見る側が理解してくれたと思います」

-朴監督の映画はファンも多いが、偽悪的で悲観的な状況が繰り返されるからと嫌う人も多いです。

 「心温まる素晴らしい映画を作る監督が非常に多いですが、私までがそういった映画を作る必要が必ずあるのかと思うのです。私が常に不平分子として暮してきたからか、どんなことに対しても健全な視覚では見られないようです」

-やはり『共同警備区/JSA』がターニングポイントと言えるでしょうね。

 「JSAの制作会社『ミョンフィルム』の李恩(イ・ウン)、沈裁明(シム・ジェミョン)さん夫婦は、私にとって命の恩人に違いありません。多くの制作会社から無視されて行商人のようにシナリオをカバンに入れてミョンフィルムを訪ねた時、沈裁明代表が『3人組』が良かったと『JSA』を受け入れてくれました。『3人組』で鄭仙景(チョン・ソンギョン)さんが奪われた子供を取り戻すシーンが印象的だったと言ってくれましたが、その時ちょうど沈裁明さんは妊娠していたそうです。やはりタイミングが良かったのです」

-ハリウッドからのオファーが相次いでいるとか。

 「コンタクトを受けることは多いですが、具体的なオファーは多くありません。相手が特定のアイテムまで用意して接触してきたのは3回くらいだったでしょうか。実際に私は英語もできませんし、ジョン・ウー監督のように英語でのコミュニケーションに何ら問題のないアクション映画監督でもないので、ハリウッドへの進出はちょっと考えてしまいますね。韓国でもできる映画を敢えてハリウッドでやる必要はないと思います。アイテムさえ良ければ外資や海外の俳優を投じて韓国で撮影することも可能ですし、もちろん超大作の西部劇やSFでも構いません」

-韓国で最高だと思う俳優は?

 「宋康昊(ソン・ガンホ)さんは冷たい演技、崔岷植さんは熱い演技でそれぞれ最高の俳優だと思います」

-『復讐は我がもの』(日本タイトル『復讐者に憐れみを』)、『オールド・ボーイ』に続く復讐シリーズ第3弾となる『親切なクムジャさん』(仮題)の主演に李英愛(イ・ヨンエ)を抜擢したのは何故ですか?

 「清楚に見える女優が主演を務めるべきだと思ったからです。そんな清楚なイメージの女優が復讐を演じるのが面白いと思ったのです。過去の2作品とは違って復讐よりは償いの物語に近いでしょう。自然主義的だと言いましょうか、温かく女性的な映画にしようと思います」

-監督として最も求めるものは何ですか。

 「映画をこれからも作ることができる環境です。評判が悪くて観客も集まらないような映画を作っても、次の作品を作れることができるようになればと思います。すべての監督の最大の悩みは次の作品を撮ることができないかも知れないという不安です」

-カンヌで受賞したことのある林権澤(イム・グォンテク)監督が今年で68歳になるが、朴監督はそれまでに何本の作品を撮るのでしょうか。

 「最低でも20本は撮りたいですね。

林監督が今までに99本の映画を撮ったことが本当にうらやましい限りです」 zeeny@chosun.com

パク・ウンジュ記者 djlee@chosun.com , 李東振(イ・ドンジン)記者 djlee@chosun.com
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