『花より美しい』で熱演キャラに変身したキム・フンス

 あちこちと好き勝手にはねた最近流行の髪形のことをホイルパーマというらしい。おかげで190センチある身長が2メートルを超えて見える。

 14日に30話の放送を終えたKBS第2テレビの水木ドラマ『花より美しい』の末っ子「ジェス」だ。彼はこの6カ月間、本来自分の名前である「キム・フンス」よりも「ジェス」で通してきた。

 「誰も私の名前では呼びませんでした。放送作家のノ・ヒギョン先生はもちろん、街角で会う人々からも『ジェス』と呼ばれました。なので自分でもジェスだと思っていました」

 最終回を迎えてから一週間が経ったが、いまだにこのドラマの熱烈なファンは禁断症状から抜け出せず、毎日のようにドラマのホームページをチェックしている。

 20日、『花より美しい』のホームページにキム・アヨンさんは「鳥肌の演技」と書き込み、脚本を書いたノ・ヒギョン作家は「私の一生一大の発見」とキム・フンスを絶賛した。そのくらいに彼の演技力は予想外のものだった。

 「初めてシナリオ練習のために集まった時でした。朱鉉(チュ・ヒョン)さんと高斗心(コ・ドゥシム)さんは、初めから私のことを誰だかも知りませんでした。そして分かったふりをしてくれた先輩方も『あ~“カン・ホドンの天生縁分”に出ていた“ズルズルズル”でしょ?』なんて言うんです。まったく寂しい限りでした」

 このドラマに出演するまで彼のあだ名は「ズルズルズル」だった。『カン・ホドンの天生縁分』という番組で、キム・フンスはいつも相手の女性に断られ、引きずられるように退場させられるキャラクターだった。しかし、このドラマが中盤に差し掛かった頃からは、いわゆる「タレント」から「俳優」に生まれ変わっていた。

 自分の夫を奪った女のために腎臓を提供する母親(高斗心(コ・ドゥシム)扮す)に涙を流しながら演じたジェスの姿。「母さんは母さん一人のものなのかよ?母さん一人だけのものじゃないのになぜ…」、そして痴ほうになった母親に「息子の顔も分からないようには絶対にしない」と繰り返し口にするジェスの姿を見て視聴者たちの胸は張り裂けそうになったものだ。


 「演じている時はめまいがして血がさかのぼるのを感じます。シナリオに集中していたからでしょうか。その姿を見た視聴者の方がホームページの掲示板に『あの人が本当にズルズルなの?』なんて書き込むんですよ」

 まだキム・フンスのことを知らない視聴者も多いが、彼はすでにデビューしてから7年が経つ。『学校2』というドラマでデビューしたキム・フンスは、常に「パッとしない」キャラクターだけを繰り返し演じてきたと言う。

 最初に演じた役がそうだったからか、毎回のように同じようなキャラクターを演じているうちに、すっかりそのイメージが固定されてしまった。

 「誰かさんのように私は“イケメン俳優”ではありません。自分でもそれは良く分かっています。最初から私の目標は“人気スター”ではありませんでしたし、ただ立派な俳優になることだけでした。今回のように成り切れる役を与えて頂いたのは、その夢をつかむための機会を与えてみようと思ってくださったためではないでしょうか」

 聞き返す彼の瞳は子どもみたいに澄み切っている。お母さんを叫びながら泣いていたドラマの中のキャラクターと重なった。

 「演技者が技術で涙を流すことは簡単だと思うんですよ。でも、その状況に集中して本当に涙を流せば、視聴者も一緒に泣いてくれるんです。演じている人がその感情を感じられず、目薬で涙を流せば、視聴者がその感情を感じられるはずがありません」


 キム・フンスはテレビ出演のため、中学校3年の時から家を離れて生活してきたという。特別な連絡がなくても常に自分を信じてくれる両親。しかし、今回はドラマが放送される水、木曜日になれば、父から携帯電話にメールが届いた。

 「お母さんがお前の演技を見て泣いているよ。帰ってきて慰めてあげなさい」

 流星のように現れては、流星のように消えていく芸能界の数多くの星たち。ジェス、いや、フンスもそう変わりないはずだ。しかし、一つだけ記憶しておきたいことは、視聴者だけでなく、フンス自身も自分の武器が“顔”ではないという点をよく知っているということ。

 キム・フンスは「集中して演技をして、その演技が気に入れば、本当に赤ちゃんのように気分がよくなるんです」と、透明に笑った。

 春を筒抜ける桃の木のように、22歳のこの若い青年は淡いピンク色の気運を生み出していた。

魚秀雄(オ・スウン)記者 jan10@chosun.com
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