騙されているのは登場人物だけの映画『ライアー』

 タクシードライバーのマンチョル(チュ・ジンモ扮す)は、二人の女性の間を行き来しながら二重の結婚生活をする。そうしたある日、偶然にもマンチョルが凶悪犯の逮捕に協力して取材に集まった記者たちのせいで正体がばれそうになる。

 マンチョルが友達のサング(孔炯軫(コン・ヒョンジン)扮す)と一緒に口合わせしてきた嘘は、徐々に化けの皮がはがれながら雪ダルマ式に状況が複雑になっていく。

 映画『ライアーx(23日公開)には非常に魅力的な面々が出演している。監督は『同い年の家庭教師』のキム・ギョンヒョンで、イメージチェンジを試みるチュ・ジンモと卓越したオリジナリティーを持った孔炯軫をツートップにソン・ヒョンジュや林玄植(イム・ヒョンシク)まで加わり、コメディー映画としての成功はすでに約束されたようなものだ。

 しかし、残念なのが『ライアー』はそのもの自体が荒唐無稽な作り話のような作品なのだ。週末に放送されているような完成度の低い再現ドラマを見ているようなこの映画は、地表面から50センチくらい浮いているように非現実的だ。

 最大のウィークポイントは各シーケンスに「設定」はあっても「解決」がないという点だ。絶妙な嘘で危機を乗り越えなければならない状況で自らを危機にさらしても俳優たちの突発的行動にのみ頼って誤魔化し通してしまう状況が終始繰り返される。

 似たようなコンセプトだった映画『彼女を信じないでください』の模範的な姿に比べるとさらに見窄らしく見えるこの映画のプロットで不思議なのは、小学生でも呆れてしまうようなレベルに出演俳優たちが見事に編まされているという点だ。この映画のユーモアの核心となっている「同性愛嫌悪症」もやはりギャグにしては度が過ぎるほど攻撃的に歪曲されている。

 『同い年の家庭教師』からイメージされるキム・ギョンヒョン監督の長所は、キャラクターにあったようだ。しかし、キャラクターコメディーではないこのハプニングコメディーで監督は、期待外れの演出で非常に惜しまれる印象を濃く残している。

 孔炯軫、ソン・ヒョンジュ、林玄植はトップレベルのコメディー俳優だが、説得力のないハプニングコメディーの中で彼らの演技は的を得ないままどんどんとスクリーンの外へとはみ出していく。そしてチュ・ジンモも残念だが、まだ力不足のようだ。

李東振(イ・ドンジン)記者 djlee@chosun.com
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