予告編で映画のヒットを支えるナム・ファジョン監督

 ナム・ファジョン(32/X-nergy代表)監督が映画『太極旗を翻して』(日本タイトル『ブラザーフッド』)の撮影フィルムを手にした時、フィルムの分量は24時間に近かった。公開前からスケールの大きさが話題だった映画に相応しく、カメラ3台で撮影されたおびただしい量だった。

 監督の仕事は24時間分のフィルムを予告編の2分30秒に圧縮すること。核心場面を選んで曲や台詞を最大限に活かして観客を引き付けることが彼女の“任務”だった。

 ナム監督が予告編を制作した『太極旗を翻して』は、1000万人以上の観客動員を記録した。監督は韓国映画史上初めて1000万人以上の観客を動員した映画『実尾島』(日本タイトル『シルミド/SILMIDO』)の予告編も手がけ、韓国映画史に残る大ヒット映画の予告編を制作した人物として脚光を浴びている。

 「2本の映画で2000万人以上の人が観たのです。次はどうすればうまくできるかプレッシャーだらけです」

 昨年から映画の予告編を専門に制作する会社「X-nergy」(シナジー)の共同代表を務めているナム監督は、この分野では紅一点の存在だ。2000年から本格的に仕事を始め、今までに約20本の予告編を制作し、4年で業界トップにのぼりつめた。

 彼女の特徴とはいったい何か?「韓国映画がターゲットにしている年代が20代初め~中盤の女性です。私の感覚がそのまま活かされるわけです」。他にはない映像を制作するために歌謡曲からテクノに至るまでノージャンルで音楽を聴き、映画はもちろんミュージックビデオなどの映像も片っ端からチェックするという。

 高校時代はテレビを見ることが大好きで、大学(東亜(トンア)大学農学科)に入ってからはて芸術映画に魅せられ、映像に対する夢を抱いていた。4年近くにわたって釜山(プサン)とソウルを行き来しながらCMプロダクションに自分を売り込んだり、学校の講師をしながら月日を過ごさなければならない時もあった。

 「本当に耐え切れなくて結婚でもしてしまおうかと思いました。ところがどう考えてもそう簡単には夢を諦めることはできませんでした」

 ナム監督は「映画は難しいもので天才だけがやるものだと思った。悩んだ末に思いついたのが予告編の制作だった」と話した。完璧に学ばなければと思い、修士課程(慶星(キョンソン)大学演劇映画科)を修了し、国内では初めてという予告編をテーマにした論文を書いたと言う。

 初めて映画『殺し屋達のおしゃべり』(日本タイトル『ガン&トークス』)の予告編を制作することになった時は、一カ月間を事務所に缶詰になって作業に専念した。その予告編を観たという映画会社からの連絡が相次ぎ、最近では多くの映画からオファーが舞い込んでくるという。

 ナム監督は予告編が興行に影響する比重を20~30%程度と考える。「映画は監督が自分の思った通りに作るが、予告編は徹底して観客の目線で作らなければならない。『実尾島』のように大ヒットすれば制作に関わった人間としてうれしいが、興行に惨敗した場合は非常に心が痛む」と言う。

 彼女の本当の夢は映画監督としてデビューすることではないだろうか?

 「いいえ。他の人には面白くないかも知れませんが、予告編は独立された立派な一ジャンルです。これからは映画だけではなく、テレビスポットやモバイル、インターネットでの予告編も各メディアに合わせて制作する最高のプロになりたいです」

 ナム監督に年収を問うと、「映画関係の仕事はお金のことを考えていたら長くやることはできません」と笑顔で答えた。

ソン・ジョンミ記者 jmson@chosun.com
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