彼には不思議な魅力がある。コメディアンのイム・ヒョクピル。この名前を聞いてもピンとこない人には、彼がヒットさせたギャグをいくつか並べたほうが早いだろう。
物乞いをするように哀願する「遊んでよ」や江原(カンウォン)道方言の魅力をふんだんに使ったギャグ「すんごいですね~」などだ。
「無名の時は観ている方も期待もあまりせずに少しでも可笑しければ笑ってくれましたが、最近ではそう簡単には笑ってくれません。プレッシャーも大きいです。今回の新コーナーも今までに出したいくつかのアイディアが拒否された後にようやくOKが出たんです」
3週間前からイム・ヒョクピルはKBS第2テレビの『ギャグコンサート』で新コーナーをスタートさせた。8歳年下で後輩のキム・インソク、チョン・ミョンフン、ホ・スンジェの4人で披露する『堕落タビー』だ。
この言葉は「堕落したテレタビーズ」といった意味で、数年前に子供向け番組としてヒットした『テレタビーズ』の頭の中に不良青年の思考回路を組み込んだようなものだ。簡単に言えば『クレヨンしんちゃん』のような“おませさん”を演じるギャグだ。
周囲の反応を問うと隣にいたホ・スンジェが「ギャグコンサートで『チャンチャン』コーナーを7カ月やっても無反応だったのが、一転して『堕落タビー』は面白いと友達から携帯メールが送られてきた」と話しに割り込んできた。
同じ単語を繰り返すことで視聴者を中毒気味にさせた原作の『テレタビーズ』のように、『堕落タビー』も同様に同じ単語を繰り返す。たとえばディスコに行った堕落タビーの面々がボーイをつかまえて「ブッキング!」(ディスコなどでボーイが異性の客同士を紹介するシステム)を連呼するといった形だ。
しかし、テレビの番組で童心を大人向けのギャグの素材に使って見る側を退屈にさせないのか?
「子供たちが大人の悪い部分を真似すると心配する視聴者のみなさんも多いようです。でも私たちもそういった部分に関しては真剣に考えてやっていますので大きな目で見守ってもらいたいです。ギャグはただのギャグでしかないのです」
イム・ヒョクピルは今年、33歳になる。彼にとって職業としてのギャグとはどんなものだろうか。「キャラクターの設定をする際に腕に鼻水の跡を描いてみたことがあります。考えてみてください。鼻水がダラダラと流れれば、自然と腕でぬぐうでしょう。そうすると跡が残りますよね」
傍にいたキム・インソクが「ところがそれがテレビカメラには映らない角度だったんです。それでもヒョクピル兄さんは一カ月間、毎日欠かさず腕に絵を描き続けました。
『映らないからやめろ』って何度も言いましたが、まったく聞きませんでした」