風のナンパ師が全国行脚でダンスを披露する『風の伝説』


 下品極まりないユーモアが目立つ最近のコメディー映画に比べてパク・ジョンウ監督のダンスムービー『風の伝説』は、素材や話法といった面で新鮮かつ真面目な印象を与える。社交ダンス、ダンスホール、奥様方を狙うナンパ師が登場するが、映画はこれらの言葉が連想させる乱れた印象のストーリーとは程遠い。

 映画は何の目的もなく生きる平凡な男プンシク(李誠宰(イ・ソンジェ)扮す)が高校の同級生、マンス(金秀路(キム・スロ)扮す)からダンスの本当の魅力を教えられるが、世間は彼のことをナンパ師と誤解するがためにさまざまなトラブルに巻き込まれるといったストーリーだ。プンシクの正体を追跡した女刑事のヨンファ(パク・ソルミ)は、徐々にこの男の人生とダンスに吸い込まれていく。

 『風の伝説』はダンスに対する賛歌だ。社交ダンスの中でも難しいジャイブからタンゴといったダンスを披露する。大関嶺(デグァンリョン)牧場で踊るクイックステップの炭鉱村ダンスに至るまで、全国を回りながら見せるダンスシーンからは努力の跡がにじみ出ている。

 ところでなぜ上映時間が長く感じられるのだろうか?2時間12分という長い上映時間の間、終始観客を集中させるにはストーリー性に欠けているようだ。どうしても『Shall we ダンス?』を想像して比較してしまう。

 『Shall we ダンス?』が平凡な日常から逃避して妻に隠れて密かに社交ダンス教室に通いながらも踊る楽しさに明け暮れる人の匂いがするキャラクターで共感を得たとしたら、家庭も妻もすべて投げ出して全国を放浪しながらダンスを学び、ダンスホールのスターになる『風の伝説』のプンシクという非現実的なキャラクターは、観客が感情移入するには力不足だ。

 ヒロインが登場するが、ストーリーの内容的にも男女の関係は期待を十分に満たさない。そのため『風の伝説』はダンスの専門家たちにとっては楽しい映画かも知れないが、一般の観客を引き寄せるには魅力に欠ける。

 『ライターをつけろ』『光復節特赦』などのシナリオ作家として抱腹絶倒のギャグで多くの観客を爆笑させてきたパク・ジョンウ監督は、今回の監督デビュー作で品のある骨太のストーリーを志向した。そんな監督の才能は相変らずこの映画からも感じ取ることができる。

 うぶな主婦からスレた女に大変身を遂げて観客を驚かせたムン・ジョンヒや、動きの鈍い老人が突然若い女性と素敵なジャイブを踊りだすという白髪の老人役を演じたキム・ビョンチュンがむしろ印象的なシーンとして残るのがこの映画のアイロニーだ。

金明煥(キム・ミョンファン)記者 wine813@chosun.com
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