5000回迎える長寿ラジオ番組『音楽キャンプ』のペ・チョルス


 20年前、ペ・チョルスはギターを片手にステージを掻き乱す人気ロッカーだった。バンド「ソンゴルメ」(ハヤブサの意)のリーダーが彼の役割だった。メタルチックな荒っぽい声で歌う姿も印象的だったが、痩せ細った体や自然体のスタイルから滲み出る素朴な姿が彼をいっそう輝かせた。

 2004年4月、ペ・チョルスが世間の人々とコミュニケーションをする空間は荒々しいステージではなく小さなラジオスタジオだ。足掛け15年目になる MBC FM(91.9メガヘルツ)の番組『ペ・チョルスの音楽キャンプ』を通じて曲を紹介する彼の姿は相変らずダークだが着飾っていない。

 今ではすっかり“ミュージシャン”というよりは“ラジオパーソナリティー”としてお馴染みとなったペ・チョルスの番組が5000回を迎えた。今年の1月末に5000回を迎えていたことをうっかり忘れてしまっていたペ・チョルスと制作陣は、5月に予定している大々的な5000回突破記念イベントの企画準備に追われていた。

 ペ・チョルスを慕う後輩ミュージシャンやファンが共に参加するフェスティバル形式のイベントになりそうだ。

 生放送開始の1時間前にペ・チョルスにインタビューした。大きめの藍色をしたセーターにジーンズ、そして白髪混じりの口髭、壁にかかっている大きなパネル写真に写る姿とまったく変わらないスタイルだった。



 「放送開始が90年の3月19日でした。音楽活動に限界を感じていた頃です。1年だけ、しばらく休もうと思って始めたのですが、ラジオが音楽をやるよりずっと楽しかったんです。若い頃にステージで女性客の歓声を受けて歌った時のような感じでした(笑)」

 ペ・チョルスが天職と思っているラジオパーソナリティーとして持っているプライドは相当なものだ。「今の音楽業界で活躍する作詞家や作曲家などの制作者たちのほとんどがポップス音楽を聴いて育った世代で、『ミュージックキャンプ』が彼らに新しい音楽を提供する窓口的な役割を果たしてきた」と言うのだ。そして「韓国の大衆音楽の発展に大きく寄与したと思う」と堂々と断言してみせた。

 そんなペ・チョルスにとって「あなたの放送を毎回欠かさずに聞いた」「青春時代に最大の影響を与えた人物こそがあなただ」といったリスナーの反応は勲章であると同時にプレッシャーでもある。

 「私は覚えていないのですが、何年か前に私が放送で話したことがとても感動的で手帳にその言葉をメモしておいて今でも毎日見るという人もいます。恐ろしいですよ。私の身勝手な哲学が特に感受性の敏感な若い人々の一生に影響を与えるって考えると…」

 5000回を迎えての感想を聞いてみたが、あっさりとした答えが返ってきた。「5000回をやっただけでは分りませんね。1万回になった時にでも分るのではないでしょうか。これまでずっと楽しくやってきたし、いつになるか分りませんが『あいつの番組は良かった』という声が聞けるようになった時が引き際かなとはよく考えます」

 この日のスタジオには最近アルバムをリリースしてプロモーション訪韓した日本のギタリスト、布袋寅泰が7時から40分間ゲストとして登場した。互いに話しながら布袋が投げかけた一言に、ペ・チョルスは照れくさそうに笑って瞳を輝かせた。

「あなたも韓国の有名なミュージシャンだったと聞いたが、ギターが2本あれば一緒にセッションがしてみたい」チェ・スンヒョン記者 vaidale@chosun.com
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