女性たちの間にも相性がある。「風の娘」ハン・ビヤ(ワールドビジョン緊急救護チーム長)さんと歌手の李尚恩(イ・サンウン/Lee-tzsche)さんは、まさに最高の相性だ。アバウトな自由人、一人身でありながらも彼女たちが好きだという数百人の友人たちに囲まれ、常にどこかへと動いているという共通点だ。
そうした理由で二人が出会うまでには長年の時間がかかった。冬からずっとニューヨークの友人宅に居候していたという李さんが米国から帰って来るのを待ちわびて、その頃ハンさんはモンゴルに行っていていなかった。イラクに向かう前にソウルにしばらく立ち寄った時、ようやくハン・ビヤさんを捕まえることができた。
待ち合わせ場所は弘益(ホンイク)大前に決めた。李尚恩さんが現在弘益大前に住んでいて、ハン・ビヤさんも一時期この自由奔放な弘益大前の住民だったからだ。
李尚恩=アフリカでの話をちょっと聞かせてください。アニメ『アフリカ、アフリカ』を劇場用長編として新たに作る予定なのですが、現地に行ったこともないのに音楽を作ることが何か上辺だけのように感じてしまいます。
ハン・ビヤ=二つの顔を持った大陸ですね。美しい草原、広大な密林、勇猛な獅子の存在の一方では飢えで死んで行く子供たちがいます。アフリカの異常気温の元凶が何だと思いますか?自動車や飛行機、冷蔵庫のフロンガスです。そういったものを見ることも使うこともできない子供たちは、先進国の人々が乗っている車が吐き出す排気ガスが作り出した災いのせいで食べることもできずに死んで行っているのです。
李尚恩=そのようなことを考えれば、人生の転換点というものは本当に重要だと思います。『ダンダディ』という曲で少しばかり人気を集めた時、カネを稼いであげると言って寄ってくるおじさんたちや放送権力に嫌気が差しました。それでそのまま、ニューヨークに渡ったんです。芸能人ではなく芸術家になるために、下っ端からやり直したことは本当によかったと思います。
ハン・ビヤ=私は若干の抑圧要素が生きる上ではずっと大きなエネルギーに増幅されると信じています。女性という事実も同じです。まだ女性にとっては楽な国ではありませんが、だからこそ逆手に取って機会に変えることができるかも知れないんです。私が男性だったら「風の娘」という修飾語は生まれなかったでしょう。
李尚恩=私は基本的に男女を区分することは無意味だと思います。海外で学んだ事実は、韓国の男性が私の競争相手ではないということでした。これは本当のことです!「私は女だからできない」「子持ちの主婦だから不利」なんて躊躇する必要はありません。何事もやってみなければ自分がどこまでできるかなんて分るはずがありません。
ハン・ビヤ=うちの父親とまったく同じことを言いますね。世界地図を家のあちこちに貼り付けて娘たちと顔を合わせるたびに「世界が君たちの舞台だ」って言っていた。実際にもすべての苦痛の現場から男性を探すことは難しいです。その苦痛をそのまま抱いている被害者も女性ですが、その社会を再建すべき主人公も女性なのです。数百里の道を歩いて子供たちに与える食べ物を探し求め、学ばせるじゃないですか。歴史は男性が作ったように見えますが、実際には女性にとってのものなのです。
李尚恩=ジョン・レノンの妻だったオノ・ヨーコのことを私は非常に尊敬しています。オノ・ヨーコの作品の中に男性の尻を並べてクローズアップしたものがありますよね?権威を振るう男性にも肛門がある、ということなんです。重要なのはオノ・ヨーコがジョン・レノンという田舎者に、もっと広くて新しい世界に導いたということなのです。私もそんな力を持った女性になりたいです。そうなるために一生懸命学んで、本もたくさん読んで、旅行もします。
ハン・ビヤ=重要なことは自分が本当にやりたいことをやっているのか、ということでしょう。まずは出遅れたという考えを捨てなければなりません。
死に物狂いでやれば、できないことは何もありません!