映画『洪班長』で熱演した常に自然体のキム・ジュヒョク

 昨年に公開された映画『シングルス』に出演した俳優のキム・ジュヒョクのことをクールな都会的な男性として覚えているファンは、彼の新しい姿に肩透かしを食らった気分になるかも知れない。

 12日に公開される『どこかで誰かに何か起こればすぐに現れる洪班長』(カン・ソクボム監督)という長いタイトルの映画で村内班長のホン・ドゥシク役を演じるキム・ジュヒョクの田舍臭い新しい姿は衝撃的だ。

 彼の本来の仕事は村の班長だが、村で人手が足りなければ何処へでもすぐに掛け付ける。不動産仲介やインテリアの工事から、コンビニの店員、宅配ドライバー、レンタルビデオの店員、肉屋までと何でもこなす。

 プライドの高いオールドミスの歯科医、ユン・ヘジン(厳正化(オム・ジョンファ)扮す)がこの村で開業するが、何かトラブルが起こる度に彼は守護天使のように登場する。しかし、この都会からやってきた女医に対してドゥシクは常に「おい!歯医者」と呼びつけ、ソフトな都会の男性とは明らかに違う男性美が感じられる。

 キム・ジュヒョクは作業服やジャージを身に着けた摩訶不思議なキャラクターの魅力をごく自然に演じ、爽やかな笑いを提供して『…洪班長』を魅力的なロマンチックコメディーにしている。


 何かあればすぐに飛んで来る洪班長のようにキム・ジュヒョクは、『…洪班長』の一般試写会が終わったある日の午後11時に映画館に現われ、深夜の舞台あいさつを行った。

 キム・ジュヒョクは「洪班長は私に似ている部分が多くて楽に演じることができた。私も細かい性格ではないが何気に面倒見はいいほう」と語った。

 「今回も私はオーバーに演じたところで結局は薄っぺらいものにしかならないし、キャラクター自体が滑稽なのだからそのまま真剣に演じればいいと信じていたのですが、それが功を奏したようです。汚い言葉を一言も使わなくても笑えるんです。自分自身も一歩成長したと思います」

 声優でタレントの父親、金茂生(キム・ムセン)の話し方にどうしてこんなにも似ているのだろうか。演技なのか本来の姿なのか分からない程に自然体なキム・ジュヒョクの表情と話術は『…洪班長』の最大の魅力だ。

 「私が信じることは一つしかありません。それは努力です。今回も台詞を話す際に不自然な感じを最大限出さずに壊れキャラを演じようと、納得するまでトイレに入る時も歯を磨く時も四六時中練習をしました」



 彼の長所でもあり短所であるのは顔がとても優しく、平凡に見え過ぎるという点だ。インタビューでも本当にデビューしてから6年が経つ俳優なのかと疑ってしまう程にシャイに見えた。普段から自分はシャイな方だと言う。

 「ところがです、カメラの前ではそうじゃないんです。普段はほとんど怒ることなんてないのですが、これが演技となると正反対でカタルシスを感じるんです」

 キム・ジュヒョクは確かに自分が崔岷植(チェ・ミンシク)や宋康昊(ソン・ガンホ)などのような動物的感性や狂気に満ちた演技をする俳優たちとは距離があるということを分かっているようだ。

 「そういった狂気が自分の中でも沸々としています。普段は抑えているだけなのです」

 キム・ジュヒョクは「必ずしも狂気が常に表に出ている人だけが俳優として成功するのでしょうか?私のような人間でも俳優として成功できるという前例を作ってみせたいです」と語った。

金明煥(キム・ミョンファン)記者 wine813@chosun.com
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