『大長今』を手がけた放送作家のキム・ヨンヒョン氏

 長今(チャングム)の復讐が遂に幕を閉じた。2日に放送されたMBCドラマ『大長今』の第48話で長今は母親と韓尚宮の恨みを晴らして宿怨だった水喇間最高の尚宮の座につく。

 万事を必ず正しい道理に帰し、勧善懲悪を全身で叫ぶこのドラマの作家、キム・ヨンヒョン氏(38)は二重の大きな目を見開いて「世の中の道理こそがまさにそうだと言えるでしょう」と語った。

 「まっすぐな登場人物たちの話です。実際にシナリオを書きながらもどかしいです。身動きの幅が少ないからです。ところがそれが良いのです。しっかりとした人物なのです。仕事の細かい部分に気を配る鋭敏な人よりは行動が明快ではっきりとした人が好きです」

 キム氏は「たとえ悪人でもしっかりとした原則のある悪人なら構わない」とし、「それだけに劇中の崔尚宮には愛着がわく」と語った。

 実際『大長今』には完全な悪女はいない。キム氏は崔尚宮とグムヨンは家を守るための道具として利用されながら宿命的に悪事をやらかす他ない人物で、医女のヨリは孤児の自分を育ててくれた提調尚宮に忠誠をつくすための方便として権謀術数をめぐらす人物として描いた。

 男性の悪事に対してはまったくの付説がないこととは対照的だ。

 権力を貪って自らを苦しめ、罪もない人々の血と涙を流させる人々に対する憐れみは生きながらにして直接学んだと言う。



 「幼く力がないという理由だけで色々な人に苦しめられた時がありました。ところが後になって私を苦しめたその人たちのことが逆に可哀相だと思うようになってからは心が楽になりました。人を憎むということは本当に大変なことなのです。今はあの頃の時代に感謝しています。あの頃のことがなかったらこうしたドラマは書けなかったでしょう」

 キム氏は「すべてが生きていることに対して“母”の心を失ってはいけないということが『大長今』の核心テーマ」と言う。「食事を作ったり医術を行う心は母親のようでなければなりません。世の中のすべての存在を憐れむことがまさしく母性ではないでしょうか」

 『大長今』に登場する母親たち、慈しみ深い丁尚宮や賢明な韓尚宮にキム氏は、20年間肺の結核を患ってきた父の看病をしながら一度も不平不満を言わなかった自分の母親の姿をそのまま重ねた。

 キム氏はテレビが三度の食事よりも好きだったという子供の頃はもちろん、85年に延世(ヨンセ)大学経済学科に入学して世間と対立した時代にも、大学卒業後1年間の無職時代にも、経済雑誌の記者として働いた時でさえこの世に“放送作家”という職業があることさえ知らなかったと言う。

 「1991年末に好奇心で偶然に韓国総合学校の放送創作班に登録したのが縁で放送作家になりました。物書きをしながら生きて行きたいなんて思ったことは今までに一度もありません。

実はそれが私にとってはコンプレックスなのですが」

クァク・アラム記者 aramu@chosun.com
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