今月14日にソウル市内のオリンピック体操競技場で行われたシン・スンフンのコンサート会場。制作費に5億ウォン以上を投じたというこの公演は非常に見どころが多かった。
左右の照明タワーが横に移動しながら舞台の両翼になるかと思えば、シン・スンフンが新曲『哀心歌』を歌う時には筆で描いたアニメが客席を驚かせた。派手な照明やたいまつ、爆竹などの舞台装置も威力を発揮した。
『彼女と最後のダンスを』では華麗なラテンダンサーたちが雰囲気を盛り上げた。ドラムとサムル(四物)ノリ(韓国に古来から伝わる四種の打楽器で演奏すること)、伽椰琴とバイオリンといったクロスオーバーな演出も際立った。
しかし、1年ぶりに約1万3000人の観客の前に立ったシン・スンフンは、歌以上にMCが多かった。最高では15分以上もMCが続き、その内容は小劇場で話しても遜色ない程度だった。
完璧に用意されたスケールある演出が終わると、すぐにMCとなって感動を半減させ、結果的に公演の完成度を落としてしまった。客席からは「(トークショー形式の音楽番組『ユン・ドヒョンのラブレター』をもじり)『シン・スンフンのラブレター』を見ているようだ」といった言葉が相次いだ。公演時間は4時間にも及んだ。
人気アーティストの公演中のMCが増え、「ライブコンサートなのか、お笑いコンサートなのか」といった声が多く聞かれる。「公演は楽しくなければならない」という言葉が「公演は笑わせなければならない」という意味に変わってしまったようだ。
トークの上手いアーティストからあまり上手ではないロックバンドに至るまで、すべてが「歌一曲が終わると笑い話」といったスタイルが定番のようになってしまっている。
今月8日の午後から慶煕(キョンヒ)大学平和の殿堂で行われたイ・スヨンのコンサートも同じだった。イ・スヨンは哀愁のバラードを歌い終えると、打って変わってコメディエンヌのようになっていた。
彼女はステージに焼酒を持ってくると、男性ファンの一人を壇上に呼んでコップ一杯に焼酎を注いで「一気」を披露して見せた。「歌と言葉の不均衡」はイ・スヨンが自身の“路上放尿”のエピソードで最悪なものになり、会場は完全に“お笑い劇場”と化した。
こうした傾向は10代の観客が中心の会場ではさらに著しい。今月15日に延世(ヨンセ)大学大講堂で行われたロックバンド「Buzz」の公演はまるで「ファンクラブの創立式」に近かった。
申重鉉(シン・ジュンヒョン)からシナウィに至るまで、ロックの名曲を演奏したメンバーたちは5人のオーディエンスをステージに呼んでゲームを行い、最後の勝者には頬にキスをした。メンバーたちはオーディエンスに向かって最後まで友達に話しかけるような言葉遣いだった。
ステージでファンと対話をすることは重要で意味のあることだ。しかし、多くの人が「対話」と「ギャグ」を勘違いしている。こうして「公演最大の美徳は音楽」という本来の意味も徐々に崩れつつある。