ヤクザコメディーの復権を賭ける『木浦は港だ』

 アクションコメディー『木浦は港だ』(キム・ジフン監督)は、タイトル自体が演歌の曲名のようだ。ほのぼのとして温かく、韓国の大衆情緒に合った娯楽性を兼ね備えているが、どことなく何処かでたくさん耳にした曲調のようだ。

 『太極旗を翻して』が大ヒットする最近の韓国映画界で『木浦は港だ』は再びコテコテのヤクザ映画を展開する。木浦のヤクザ、ミンギ(車仁杓(チャ・インピョ)扮す)が率いる暴力団の麻薬密売の現場を押さえるためにソウルの若い刑事、イ・スチョル(チョ・ジェヒョン)がヤクザのナム・ギナムに偽装して組職に入り込み、女性検事のイム・ジャギョン(ソン・ソンミ)も同様にナム・ジュナという人物に成り済ましてドタバタ劇が開始する。

 映画の前半がチョ・ジェヒョンとヤクザたちのコメディーなら、後半は組長に扮した車仁杓が活躍するノワールアクションだ。今までにコメディーとは縁のなかったチョ・ジェヒョンと車仁杓が“壊れる”こと自体が珍しい風景だ。「これでも面白くないのか?」と言わんばかりに映画は観客を笑わせるためにあらゆる手段をすべて動員する。


 チョ・ジェヒョンはヤクザに成り済まして茶目っ気を振り撒き、車仁杓も負けずとドギツイ木浦訛りを駆使して尻踊りをして見せる。

 黒のスーツを着られる日を夢見て小汚いジャージ姿で可笑しな言動を連発する寂れた地方都市のヤクザのエピソードはこうして最後まで続く。頭で鐘をつく「人間鐘つき」や大便や屁といったトイレネタもお約束通り登場する。

 大学路(テハンノ)の劇場舞台で活躍するパク・チョルミンなどの助演俳優たちの演技も絶妙だ。どんな退屈なシチュエーションでも必ず笑わせてくれる。しかし、明確なカタルシスを与えるには力不足だ。

 すでに『ナンバー3』の無鉄砲なヤクザや『家門の栄光』で木浦のヤクザを目にしたことのある観客たちにとって、この映画が新鮮に感じるとは思えない。

金明煥(キム・ミョンファン)記者 wine813@chosun.com
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