古くよれよれの道着姿にぼさぼさの頭、黒く日焼けした顔。浪人のような姿だが鋭く光るその眼光は相手を圧倒するのに十分である。
若くして演技派俳優としての地位を固めた梁東根 (ヤン・ドングン/25)が伝説の格闘家、崔倍達(チェ・ペダル/本名:崔永宜(チェ・ヨンイ)/日本名:大山倍達/1922~1994)に変身した。
梁東根は崔倍達の一生を描いた映画『風のファイター』(制作:アイビジョンエンターテインメント)の撮影のため、日本の名古屋近郊にある犬山市に滞在して日々撮影に励んでいる。
梁東根は11日午後、明治時代(1868~1912)の主要建造物を保存展示している野外博物館「明治村」にある武術道場「無声堂」で空手家たちとの対決シーンを撮影した後、帝国ホテルに場所を移して韓国と日本の記者を相手にインタビューを行った。
「クランクインするまでに準備をする時間が本当にありませんでした。梁允豪(ヤン・ユンホ)監督が渡してくださったビデオや資料などで崔倍達先生の生涯を知りましたし、極真空手の釜山(プサン)支部で4日間だけ主要動作を学びました。今でも暇さえあれば鉄アレイを手にしたり蹴りの練習をしていますが満足できません。せめて精神面だけでもと思い、崔倍達先生の内面世界を最大限表現しようと努力しています」
梁東根の顔は本当にやり切れない表情で一杯だったが、周囲の人々の評価はまったく反対だ。ヒップホップダンスで鍛えた柔軟な体とカリスマに溢れた表情が、すべての心配を洗い流してくれるというのだ。
映画の中では韓国人同士の会話以外は日本語を使わなければならないが、ラップ歌手としての経験があるお陰か、日本語会話の担当者が「発音も良く、覚えも早い」と誉めている。
梁東根は87年の特集ドラマ『塔里』でデビューして以来、18年目を迎える中堅俳優だ。2000年以降、『受取人不明』、『海賊、ディスコ王になる』、『ワイルド・カード』などの映画やドラマ『勝手にしやがれ』で印象的な演技を見せ、美男子俳優が幅を利かせる忠武路(チュンムロ/韓国映画の中心地)と汝矣島(ヨイド/テレビ局が集まるエリア)から常にキャスティングのオファーが相次いだ。
最近もク・ジャホン監督の映画『最後の狼』の撮影を終え、休む暇もなく12月末から『風のファイター』の撮影に合流した。
パン・ハッキの同名漫画を原作にした『風のファイター』は、昨年11月末に南楊州(ナムヤンジュ)のソウル総合撮影所で崔倍達の幼少時代がすでに収録され、2日から14日までは日本で計60回の撮影分のうちの12回分を撮影する。一日たりとも無駄にできない強行軍で苦労も多いが、梁東根は至ってのんきだ。
「現場で味気ない弁当ばかりを食べていると食事の時間が楽しくなくて、栄養不足なのか顔も出来物だらけです。それ以外は良いことの方が多いです。うちのクルーは有名観光地で文化財を背景に良く撮影をするのですが、次にいつ来られるかも分からないのでしっかりと目に焼き付けています。行く先々には温泉もありますしね。日本の有名俳優と共演できることも私にとっては何よりも光栄です。海外の俳優と共演する機会なんてそうありませんからね」