戦渦の揺るぎない家族愛を描いた『太極旗を翻して』

 第二次世界大戦以降に勃発した最悪の戦争、韓国戦争の当事国で終戦から50年目にして戦争映画の本質に最も接近した映画が誕生した。

 前後世代である姜帝圭(カン・ジェギュ)監督が『シュリ』を生み出した猪突猛進の勢いで韓国戦争を描いた『太極旗を翻して』(5日公開)は、147億ウォンを投じたスケールだけではなく、接近方法からして以前の韓国戦争を扱った映画とは一線を画す。

 韓国戦争を素材にした韓国映謔ヘ戦時中の1952年に公開された『三千万の花束』を筆頭に100本が超える。しかし、『帰らざる海兵』(63年作)が代表するように、そのほとんどが国軍の活躍を描いて反共意識を助長する内容だった。しかし、姜帝圭監督の『太極旗を翻して』は今までの常套手段から完全に逸脱している。

 未亡人の母親の面倒をみて暮し、戦地へ赴いた兄弟を中心に生存と死のドラマが2時間30分を満たす『太極旗…』には、派手な武勇伝も非現実的なロマンスもない。ただあるのは地獄のような運命の中から最後まで人生を諦めずにもがいた戦中派世代の姿だ。

 まるでスピルバーグの『プライベート・ライアン』のように壮絶で惨たらしい戦場の風景、空腹、恐怖、怒りに震える血まみれの兵士の姿だけがある。

 貧しい家の長男に生まれて靴磨きをして弟を学校に行かせた兄のジンテ(張東健(チャン・ドンゴン)扮す)は、一家の期待を一身に背負っていた弟のジンソク(ウォン・ビン)が地獄のような戦場に送られる運命が決まると、死力を尽くして弟を守ろうとする。


 兄は武功を立てて弟を除隊させようと命さえも顧みない。しかし、その“愛情”は時間の流れと共に“執着”へと変化し、ジンテの恋人(イ・ウンジュ)も劇的な運命に直面するとジンテのもがきは狂気となって爆発する。

 韓国戦争という巨大な悪夢の中心に観客を導く戦争スペクタクルと兄弟愛は、ドラマを導きながらもこの大作にマイナスの面も与える。愛情から狂気に至る大きな振幅を見せる兄弟間の感情のテンポは、映画中盤までは非常にゆっくりと進み、中盤から後半にかけては険しいほどに急上昇する。

 終盤の衝撃的な転換(詳細は公開前のため明かさない)には誇張された感情が込められている。

 しかし、こうしたすべての点を考慮しても『太極旗…』は今日の韓国人が観るべき映画と言える。400万人が亡くなり、今日でも韓国人の心の中に決して消されることのない傷跡を残した大事件の実体を最も詳細にわたってリアルに描きながら「戦争とは私たちにとって何なのか」ということを自然に考えさせるからだ。

 劇中45回爆発する大型戦闘シーンには、忠武路(チュンムロ/韓国映画の中心地)最先端の特殊効果技術と演出力、綿密な考証が総動員された。

 砲弾が放たれる度にシェイキング技法(カメラを爆発の震動のように振る撮影技術)でドキュメンタリーのように振動する画面…。爆音は鼓膜を破り、飛び散る土は今にもスクリーンの外に飛び出してきそうだ。戦地の中心に座っているような錯覚に陥るハイパーリアリズム(超写実主義)の境地だ。

 記録を忠実に再現した街並みのセットには、まるで本物のように作られたシャーマンタンクが登場し、崔岷植(チェ・ミンシク)が人民軍の将校役として友情出演する平壌(ピョンヤン)市内での戦闘シーンが圧巻だ。

 最後まで登場する殺戮シーンと対を成すものは家族団らんで夕食を食べるといった平和な日常の大切さだ。主人公のジンテは家族の幸せだけを願い、靴を磨くことだけでは物足りず戦地で命を失うことさえも惜しまなかった。

 『太極旗…』はそんな先輩世代たちに敬意を示している。家族同士が互いに助け合いながら懸命に貧しい時代を生き抜いてきた当時の韓国の人々に…。

金明煥(キム・ミョンファン)記者 wine813@chosun.com
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