権正生(クォン・ジョンセン)の『こいぬのうんち』が日本の児童向け絵本市場で好評を博している中、今年の3月には韓国の絵本5冊がさらに翻訳出版される。
日本のアートン出版は『不思議な絵の掛け軸』(ピリョンソ)、『黄牛とお化け』(ダリム)、『蚊と黄牛』(キルボソリニ)、『真っ黒な国から来たむく犬』(トンナム)、『ヘチと化け物四兄弟』(キルボソリニ)の5冊の絵本を翻訳出版する契約をした。
1年に1~2冊の絵本が翻訳されたことはあるが、一度に多くの本が出版されるのは今回が初めて。大竹聖美さん(34)はその掛け橋の役割を果たした主人公だ。
「韓国の絵本には日本の絵本にはない表情が多く見られます。母のふところのように温かくて涙と笑いに溢れています。子供を育てる方法が日本とは違っているからでしょう。日本には胎夢(妊娠の兆しとなる夢)や子守歌、産後調理(産後のケア)といった概念がありません。赤ん坊の誕生が一家の重要な祝い事と思われている韓国社会で素晴らしい絵本が生まれるのは当然のことかも知れません」
7年前、韓国の児童文学を研究するために延世(ヨンセ)大学に留学したのもそういった魅力に惹かれたためだ。
大学時代に1920年代の日本の児童文学史を研究し、植民地だった韓国の文学史にも関心を持つようになり、93年に日本の児童文学賞を受賞して話題になった『半分のふるさと』の著者、李相琴(イ・サンクム)元梨花(イファ)女子大学教授と出会い留学を決心した。
2002年に完成させた博士号の学位論文のテーマは『近代韓日児童文学教育関係史研究』。
方定煥(パン・ジョンファン)、金素芸(キム・ソウン)、崔南善(チェ・ナムソン)など、光復以前の作家については韓国の学者以上の知識と見識を持った人物として評壇で知られている。
今回出版される5冊の作品からも分かるように、大竹さんの関心は韓国の伝統文化と宇宙観が描かれた作品にある。
「神話や伝説はもちろん、食べ物一つをとっても人が生きる哲学が感じられるのが韓国文化の力ですね。5冊はその偉大な文化的資源をうまく活用した絵本です。
アニメに押されて徐々に衰退気味の日本の児童文学とは対照的に韓国児童文学の力は日々に増しています」