映画『氷雨』で「ウォッカのように」熱い男を演じる李誠宰

 映画俳優の李誠宰(イ・ソンジェ)のことを李廷香(イ・ジョンヒャン)監督が「水のような俳優」と言ったそうだが、この表現は十分とは言えない。

 注がれる器に合わせてどんな姿にも変わり、無色無臭な点は水のようだが、李誠宰は決して水のように姿かたちがないわけではない。

 李誠宰が16日に公開される映画『氷雨』(金ウンスク監督)で、これまでとは違う別の魅力を披露する。

 『ガソリンスタンド襲撃事件』(日本公開タイトル『アタック・ザ・ガス・ステーション!』)や『公共の敵』のような多血質や狂人といった悪役ではない。山をこよなく愛し、何よりも一人の女性(金ハヌル扮す)を愛する男性、カン・ジュンヒョンを演じる。

 妻のいる身で他の女性を愛し、その愛のためにハン・ウソン(宋承憲(ソン・スンホン)扮す)という青年が傷つくが、一足遅れて訪れた春に人生のすべてを賭けるこの男の姿は、むやみに非難できないほどに熱く美しい。

▲ウォッカ

 「感情を表に出すというよりは、内へ内へと持っていく愛の形なので、少々大変でした」

 近年の出演作では主に冷淡な男を演じていたが、久々に熱い演技を見せた李誠宰と向い合って座り、「この人のイメージと最も似合うものはいったい何だろう」と考えた。するとウォッカが思い浮かんだ。表面上は冷たく無色無臭だが、喉を通すと、どんな酒よりも熱く毒々しい余韻を残す。

 共演した宋承憲までもが「李誠宰先輩は冷たい人じゃないか」と緊張したという。その冷たさについて本人はこう語った。

 「確かに自分でもソフトで温かいとは思いません。小心者ですぐにへそを曲げますし…」。しかし李誠宰は「特別に内気というわけでもないし、だからと言って外向的でもないです」としながら、「こんな私の姿に共感して支持してくれる方が多くて私はうれしいです」と満足気だった。

 「シナリオを選ぶ時は楽しさ、感動、余韻のうちの一つでもあれば出演を決めますが、今回の『氷雨』は余韻という部分で選びました。映画を観た人が後日、雪に覆われた山へ行った時にふと思い出してくれるような映画になればと…」


▲お寒いギャグ

 普段は普通に見えるが、時々おかしな言動で周囲を驚かすことも、李誠宰という人物を説明する上で欠かせない。李誠宰は意外にも、お寒いギャグで『氷雨』の出演陣やスタッフ、中でも女優の金ハヌルを笑わせるために一生懸命だったという。

 マイナス数十度のカナダの山岳地帯でのロケ中、吐く息さえも凍ってしまいそうな寒さの中で李誠宰がこう語った。

 「世の中で最も残酷なウォー(war)は『ニュークリアウォー』(核戦争)、それ以上に残酷なウォーは何だ?」、「何だろう?」、「それは…チュウォー(韓国語で「寒い」の意)!」。

 表情をまったく変えずに他人の笑いのツボを突く李誠宰のお寒いギャグは、彼の内面にある役者気質と、常に頭を回転させる思慮深さの表れのように見える。

▲熱さ

 マイナス20度前後になると粘り気のある粘液質になり、水でないことがわかるというウォッカのように、『氷雨』の李誠宰は極寒の雪山で男の熱意をほとばしらせる。ラブシーンで一気に噴き出す李誠宰の情熱は、個人的な体験に根ざしているのだろうか。

 「私の内面に抑圧された人間としての欲求を、カメラの前で発散しました」

 裕福な家庭で育ったことで知られる李誠宰だが、その言葉には意外にも「抑圧」、「欲求」、「発散」といった単語が頻繁に出てくる。

 李誠宰は「『ガソリンスタンド襲撃事件』でも鉄パイプを振り回して窓ガラスを次々と割り、自分を爆発させました。現実ではできないことができるので、俳優という職業を気に入っています」と話す。

 李誠宰は「私には経験のない愛の形ですが、誰もが夢見るような愛ではないでしょうか」と言う。

 「何よりうれしいのは、母が『お前が出た映画の中では最高だ』と誉めてくれたことです。私が親殺しの犯人として出演した『公共の敵』の時はずいぶん小言を言われましたが、今度の映画では両親も友人も涙を流していました。

これ以上うれしいことがありますか?」

金明煥(キム・ミョンファン)記者 wine813@chosun.com
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