朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の将校、ペクドゥ(鄭俊浩(チョン・ジュノ)扮す)と兵士のトンへ(孔炯軫(コン・ヒョンジン)扮す)は海で釣りを楽しんでいる間に時化に遭い、漂流した末に東海岸の海水浴場に流れ着く。
2人は家出して避暑地に来た女子高生ナラ(リュ・ヒョンギョン扮す)と出会い、右往左往しながらも何とか北朝鮮に戻ろうとする。
映画『東海(トンへ)の水と白頭(ペクトゥ)山』(31日公開)は「孔炯軫の独壇場」のような映画だ。
この数年間、多くの作品で優れたコミカル演技で脇を固めた孔炯軫は、今回の初主演で水を得た魚のように生き生きとしている。
機転の効いた台詞を特有の表情で話すのに限らず、砂浜でこける典型的なスラップスティック的な演技をする時でさえ、体に染みついたコメディのテンポと感覚で見る側の目を楽しませる。
さらに刑事役の朴チョルのエンターテイナーぶりも遺憾なく発揮され、大衆映画としての条件を備えるのに成功した。アクションシーンも見劣りしない。
しかし、この映画の愉快さは、ナラとその友人たちが登場すると一転して不愉快になる。悪口が半分の台詞を女子高生たちが何も考えずにやり取りする場面を客席で見ていると、金を払って不愉快になったような気がしてくる。
ホタルにまつわる思い出を使った後半の意図的な「感動」も、真夏の海水浴場で展開するストーリーを真冬に見ている状況に劣らずしらけさせる。
映画の核心である孔炯軫のコミカル演技も十分に楽しいが、『パイラン(白蘭)』よりペーソスが足りず、『いい人がいたら紹介して』よりも情感がなく、『星』よりも爆発力に欠ける。
アン・ジンウ監督は下ネタとスラップスティックを織りまぜて場面を構成し、それなりに面白いコメディを完成させたが、デビュー作『オーバー・ザ・レインボー』のなめらかな感性を犠牲にした割には収穫は少なかった。