巻き戻し不可能の人生を描いた映画『ビデオを観る男』

 昇進と同時に会社を辞めて離婚までオた後にレンタルビデオ店を始めた男(チャン・ヒョンソン扮す)。

 希望を捨てて閉じこもり、“100分の娯楽”をレンタルする生活に慣れた頃、返却されるビデオテープの中にラブレターが舞い込むようになり、ある女性(方銀珍(パン・ウンジン)扮す)の私生活が撮られたビデオテープが間違って返却される。

 男は手紙の差出人が誰なのかを確認しようと苦心する一方で、未亡人のその女性に好意を寄せる。

 キム・ハクスン監督の『ビデオを観る男』(28日公開)の主役はレンタルビデオ店だ。

 店は映画を観て一日の疲れを忘れようとする人々の他、友人のいない水商売の女性、夜道で見知らぬ男に追われる女性、ホームレスなど、“巻き戻し”のできない不安な人間の群像の数々を描き出す。

 無表情で暮すことを決めた男も二つの事件によって複雑な愛の感情に巻き込まれる。

 この映画は推理が必要なラブストーリーとウィットに富んだユーモアで、現代人の孤独で破壊された人生を描き出す。

 「妻の浮気が悩みです」と告白すれば“妻殺し”のビデオをそっと差し出すシーンや、教会での懺悔からサーカスまで、さまざまに広がる男の空想や夢が楽しさを倍増させる。

 『ビデオを観る男』には恋人の家の前でうろうろとするような中途半端さはない。待っていても訪れないということ、始めは運命だと思っても、すぐに当たり前になるということをわかっているからだ。

朴敦圭(パク・トンギュ)記者
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