ドラマ『大長今』のヒットでナムルも大人気だ。
ナムルとは32歳で無職の独身男性、金ヨンファンさんの別名。
18年間の一人暮らしの経験を生かして昨年8月に「ナムル・ドット・コム」(www.namool.com)というホームページを立ち上げ、20代の独身男性からお年寄りまで、幅広い年齢層の人々に愛され、300種類に及ぶレシピを紹介した本を出版するまでに至った。
「ただの画家志望であって(金さんは98年に中央(チュンアン)大学韓国画科を卒業した)決してプロの料理人ではない」という金さんのレシピは膨大な量だ。
5分もあれば完成するたまごスープをはじめ、慶尚(キョンサン)道式の牛肉大根汁に至るまで、その種類は多種多彩だ。鳥肉のケバブにライスヌードル、冷菜、日本式のお好み焼きなど、各国の料理まで網羅している。
料理上手な独身男性になったエピソードもユニークだ。
「母の手料理は私の記憶にはあまり残っていません。食堂の仕事でとても忙しかったんです。母の代わりに兄弟の食事を作るのはいつでも私の仕事だったので、その時から興味半分で料理本を見たりして手探りで料理を作っていました」
それでも実戦は重要だった。学生時代にキッチン付きの部屋で過ごした日々は、彼の味覚と料理の腕前を育んでくれた。友人たちに最も好評だったのは、参鶏湯(サムゲタン/若鶏の内臓を取り出し、朝鮮人参・ナツメ・もち米を詰めて煮込んだ料理)とチュオタン(ドジョウ汁)。
風が吹く寒い日には熱々のスンドゥブチゲ(豆腐の辛鍋)、雨の日には独りでもキムチジョン(キムチのお好み焼き)を焼いて食べた。
通信販売で最近人気の「ナムル式ヤンニョムケジャン(ワタリガニのヤンニョム(薬味)漬け)」は、大学卒業後にソウル市内の延新内(ヨンシンネ)で一人暮らしをしながらマスターしたものだ。
絵に没頭しながらも、帰宅途中に毎日通る市場の誘惑には勝てず、試行錯誤しながら完成させたメニューだ。食堂で働く母親をもあっと言わせたヤンニョムケジャンが人気を呼び始めると、彼は絵の具を買う心配をする必要がなくなった。
「私の料理のコンセプトですか?それは生きるということです。難しい名前の材料はまったく分からず、扱い方もよく分かりません。基本的な料理法に材料とソースだけを少し変えてやれば、美味しくて体にも良い料理をいくらでも作ることができることを伝えたいのです。料理人ではなくても、独身男性で無職のあなたにでもいくらでもできるという自信感を与えることが私の料理の強みです」
インスタントラーメンばかり食べている同じ無職の独身男性のため、金さんが「よく食べてよく生きる」秘訣をいくつか伝授してくれた。
まず、冷蔵庫の管理だ。肉は一回に使う分量に分けて透明なビニール袋に入れて冷凍する。黒いビニール袋は禁物だ。中身が見えず、すぐに忘れてしまうからだ。
野菜はよく洗い、密閉容器に保管する。長持ちするのですぐに捨てることもなくなり、萎れる心配もない。
飢えないためには皿洗いも徹底的にやる必要がある。洗い物がたまったら料理に対する興味も薄れてしまうからだ。お腹はすいているのにお皿から洗うとなれば、インスタント食品に手を出しやすくなる。
「これでは体にも悪いし、怠け癖がつくという悪循環に陥ります。何と言っても自炊するにはまめにならないと。私のように(笑)」
金さんの初めての料理本『2000ウォンでできる料理』は、出版と同時にインターネット書店のベストセラーに躍り出た。