すべてを脱ぎ捨ててゼロから出発する俳優のビョン・ウミン

 ブロードウェーミュージカル『フル・モンティ』は、6人の男性主人公が最後のシーンで裸体を見せることでヒットした。

 その『フル・モンティ』の国内初の正式翻訳公演(12月6日~2004年1月18日/韓電(ハンジョン)アーツプールセンター/ハン・ジンソプ演出)にタレントのビョン・ウミンが6人の主役の一人として出演することは意外にも思える。

 大衆に親しみのある出演者を揃えたキャスティングの結果のようにも見えるが、ビョン・ウミンにはミュージカルとは縁遠いイメージがあった。その上、名前だけでも黄色い声が聞こえてきそうなアイドルスターでもなく、共演するコメディアンのイム・ハリョンのように、このコメディミュージカルの“ユーモア”のためにキャスティングされた様子でもない。

 これらの疑惑は11日の夕方に良才(ヤンジェ)洞にある稽古場で行ったインタビューで明らかになった。

 40歳を目前にしたビョン・ウミンは「この10年間に映画やドラマにあれこれと出演したが、これといった代表作もないまま適当に毎日を過ごしてしまったようで、これを清算する意味でゼロから出発してみようと思った」と打ち明けた。

 ビョン・ウミンは失業者になった鉄鋼労動者6人が、自らのアイデンティティを取り戻そうと、すべてのものを脱ぎ捨てるようにストリップショーを演じるミュージカル『フル・モンティ』が、まさに「今の自分の気持ちと一致する」と言う。


 実はビョン・ウミンは中央(チュンアン)大学演劇学科を卒業している。しかし、80年代の在学中に数回、ミュージカルの舞台に立っただけだ。大学卒業後、90年代半ばまでは多くの映画に出演したが「代表作は何か」という質問に、ビョン・ウミンは苦笑いをしながら「ありません」と答えた。

 映画『結婚物語2』に主演したが「前編の良さをすべて覆した粗悪なアクション映画」と酷評された。「この10年間は、ただ何となく適当に過ごしてしまいました。これまで適当にやってしまった分、故郷のような演劇の舞台で挽回したいです」

 ビョン・ウミンは一番の夢が「映画俳優としての出世作を一本残すこと」と語った。ビョン・ウミンはまだ遅くはないと言う。しかし、その目標を成し遂げるためのオファーがなかった。

 そこでビョン・ウミンは一大決心をした。“俳優ビョン・ウミン”の潜在力を最大限に生かすことのできるシナリオとキャスティングのオファーがなければ、自分が直接シナリオを手がけて主役を演じればいいと、『人形の家』というホラー映画のシナリオを最近、脱稿して映画振興委員会のシナリオ公募に応募した。

 「ハリウッド俳優のマット・デイモンも映画会社が自分の潜在能力を引き出すような作品を書かないからと、ベン・アフレックと2人でシナリオを書き、『グッド・ウィル・ハンティング』というすばらしい映画を制作したでしょう」

 「私もこの映画の制作関係者に電子メールを送り、『マット・デイモンのようにやってみたいが、どう思うか』と聞いてみました。すると今年の春に返事が返ってきました。『Do It!(やってみなさい)』と」

 現在、ビョン・ウミンは一山(イルサン)の自宅を留守にして、ソウル・駅三(ヨクサム)洞の稽古場の近くで下宿生活をしている。

 「15分かけて稽古場に歩いて行っています。人混みの中をそうやって歩くのは久しぶりです。通りすがりの人を見たり、働いている人を見ていると、夢を抱いていた学生時代を思い出します。そうした思いを抱き、これまでの10年間とは全く違う姿勢で生きるつもりです」

 ビョン・ウミンは苦しい生活の中で、人生の一大転換を夢見て「ストリップショー」を突破口にした『フル・モンティ』の6人の男たちと思いを同じにしていた。

 問い合わせ(02)2272-3001。

金明煥(キム・ミョンファン)記者
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c)Chosunonline.com>
関連ニュース