船長になって帰ってきたグラディエーター


 情熱の寂しさ。ラッセル・クロウはそのアイロニーを誰よりも巧みに表現する俳優だ。深く憂鬱な彼の瞳は、筋肉を動かして爆発的なカリスマを見せる時、恍惚とした光を放つ。

 「Wake up!」(目を覚ませ!)

 記者会見場に姿を現したラッセル・クロウが記者たちに放った第一声だ。28日(韓国時間)、米サンタモニカのシャッターズ・オン・ザ・ビーチホテルで記者会見を行ったラッセル・クロウは、すっかりリラックスしきっていた。

 『Master and Commander: the far side of the world』の公開(韓国は11月28日)を控えたラッセル・クロウは、ラフなTシャツ姿で会場に現れ、タバコを吸いながらとぼけた顔をした。

 彼は本気で話す時も冗談混じりに話した。

 『Master and…』は1800年代初めのナポレオン戦争を背景にしたフランス艦船と海戦を繰り広げる英国のサプライズ号の航路を追う海洋アクション超大作。

 『いまを生きる』のピーター・ウィアー監督が演出した1億3500万ドルを投じた超大作で、船長のジャック・オーブリー(ラッセル・クロウ)と医師のスティーブン・マチュリン(ポール・ベタニー)の葛藤と友情を描き、動感溢れる戦闘シーンの数々で肉付けをした。


 「ジャックは古いタイプの人間だが、十分に納得するだけのキャラクターだ。彼の強靭なチャレンジ精神は、現代人が忘れてしまったものだ。当時のサプライズ号の冒険は、今日のNASA(米航空宇宙局)と似ている」

 『グラディエーター』でアカデミー主演賞を受賞したラッセル・クロウは、キャラクターを演じる自分だけの秘訣を打ち明けた。

 「想像力を基本にした“発見”が重なれば、いつの間にか私は役の中に入っている。キャラクターのイントネーションや身なり、性格などはあまり障害にならない」

 『Master and…』でも判断を下し、戦闘を指揮するラッセル・クロウの爆発的な男性的魅力は相変らずだ。当初、出演をためらったラッセル・クロウは、細かい演出で定評があったピーター・ウィアー監督のためにサプライズ号に身を任せた。

 ラッセル・クロウは「10代の頃に兄と一緒に『ザ・ラスト・ウェーブ』を観てピーター・ウィアー監督の熱狂的なファンになった」とし、「監督の映画に出演することになって非常に興奮したが、彼はやはり俳優を尊敬し、説得させることができる素晴らしい監督だった」と語った。

 ラッセル・クロウによれば撮影は挑戦ではなく経験だという。そして、その経験の最終的な受け手は観客だ。

 ラッセル・クロウは「観客を相手にしなければならない映画は、機械とは違って精巧な化学反応が必要だ」とし、「観客とエネルギーを取り交わすためには、俳優が猛烈なエネルギーを放出しなければならない」と語った。

 「演技も一種の演出だ。何かを統制しなければならないからではなく、創意力を発揮しなければならないからだ」

 ラッセル・クロウは監督デビューを目指して5年間にわたって練ったシナリオがあった。『Master and…』の船長役はリハーサルだったともいえる。

 ラッセル・クロウは今まで有能な船員の一人だったが、船長(監督)の座に就いた彼の姿を見る日もそう遠くはなさそうだ。

サンタモニカ(米国)=朴敦圭(パク・トンギュ)記者
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