映画『実尾島』で再び新たな次元に達した康祐碩監督

 やはり今回も康祐碩(カン・ウソク)は何かをやってくれそうだ。

 最近、総制作費82億ウォンを投じた映画『実尾(シルミ)島』の撮影を終えた康監督は、自信に満ち溢れていた。

 先週から公開されている予告編に収録された映像と忠武路(チュンムロ/韓国映画の中心地)から聞こえて来るさまざまな噂を総合すると、2カ月後に公開されるこの作品は、波乱万丈の康祐碩監督の人生の中で最も重要な映画の一つとなりそうだ。

 薜景求(ソル・ギョング)、安聖基(アン・ソンギ)、チョン・ジェヨンが主演した『実尾島』は、金日成(キム・イルソン)主席の暗殺を命じられ結成された秘密工作特殊部隊の話を扱った作品。

 結局は国から見捨てられる部隊員たちが、1971年にバスを乗っ取って人質を盾に抵抗したが、全員射殺された悲劇的な最後が多くの人の脳裏に残る実話を素材にしている。

 監督の言葉の端々に座元らしい誇張が含まれていることを考えても、「今後、これ以上の傑作を撮るのは難しそうだ」という監督の第一声は、自分のやり方に確信を持ち、全身を投じる勝負師の確言に聞こえた。

 監督は「『実尾島』には歴史性とアクション、そしてドラマ性があり、ハリウッドの大作と正面から張り合える」と語った。しかし、男臭さだけが漂う映画では、女性にとっては魅力薄では?



 「ロマンスはないが、映画で展開される込み上げてくるようなドラマは、すべての層にアピールできる」と言い切った監督は、「大作なだけにプレッシャーが物凄く、クランクアップした時点で7キロ痩せた」と愚痴をこぼすことで、常に自分の仕事には全力投球する姿勢を再確認させた。

 実はこれまでに広く知られてきた康祐碩監督の映画的才能は『トゥー・カップス』や『公共の敵』でよく現われているように、優れたユーモアと鮮やかな主演キャラクターの描き方にあった。

 もしかしたら登場人物が多く、ユーモアを盛り込む隙間もないような『実尾島』は、監督にとっては厄介だったのではないだろうか。

 「今回の演出の核心は、その多くのキャラクターたち一人一人に生命を吹き込むことでした。場面ごとに主人公が代わりながらもスムーズに話がつながる叙事的な作品にしたかったです。今から公開されることばかりを考えていますが、もしこの映画が不評だったら、結局は私の演出力不足が原因です」

 監督は常に目標を最大限に高く設定し、自らを窮地に追い込んできた。監督の背水の陣は、夢を現実とするために自分に鞭を打つ。驚くべきことは監督のオーバーとも取れる発言が、結局はかなりの確率で実現してしまうハッピーエンドな結果として立証されているという事実だ。

 映画雑誌『シネ21』のアンケート調査で9年間「忠武路最高の監督」に選ばれ君臨している康祐碩監督は、映画会社「シネマサービス」を率いて演出、制作、配給、劇場など、ほぼすべての分野で活躍してきた。

 「映画に関わることはダフ屋を除いては殆どやった」という監督は、攻撃的なスタイルで常に話題を提供してきた。最近も京畿(キョンギ)道・坡州(パジュ)にアクションスクールの建設を決定し、シネ2000の李チュニョン代表、アイアムピクチャーズのチェ・ワン代表などと共同で、100億ウォンの映画ファンドの組成を発表した。

 ならば、常に最も至急だと判断することに専念してきた“映画人康祐碩”の今の計画とは何か。

 「それは2つある(監督はどんな質問でも、1秒と経たないうちに簡潔に答える)。忠武路の配給や映画館は既に軌道に乗った状況で、作品の本数を増やすことが重要なため、私が映画を直接演出することに集中すること。そして、制作者と投資者として、他人が撮る映画のシナリオを見て判断をすることです」(監督は真剣になる程さらに早口になる。そして早口になるほど言葉が正確になる)。

 各自違った個性があるが、忠武路の映画人たちの共通点を挙げるとすれば、“欲張り屋”か“毒々しい”のどちらかだろう。康祐碩監督は両者に当てはまる。生産性の高い欲張り屋で、効率性が高い毒々しい監督は、『実尾島』でもう一段階高い次元に達した。

李東振(イ・ドンジン)記者
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