先日、ソウルの某ホテルで開催されたワインオークションのイベントに、20世紀最高のワインのひとつと評価されている「シャトー・ラトゥール」が出品された。
「20世紀最高のビンテージ(Vintage:醸造年入りの極上のワイン)『1961年産のシャトー・ラトゥール』1本です。250万ウォンから10万ウォンずつ引き上げます。…280万ウォン出ました。ほかにはいませんか。はい、後ろの方、290万ウォンですね。カーン(ゴングの音)。290万ウォンで落札されました」
この日、このイベントを進めたのは国内では珍しいワインオークション会社のチョ・ジョンヨン(36/前ソウルオークション企画チーム長)さん。現在は高級ワインを扱う仕事をしているが、3年前までは「出世コースまっしぐら」の銀行の代理だった。
韓国IBM、ナイキコリアなどがチョさんが銀行員時代に直接取引きしていた企業。特にIBMはチョさんの手を経て250億ウォンの融資を受けもした。3年で代理にまで昇進したチョさんは、95年に米国のペンシルバニア大学のワトンスクールで4カ月間国際金融の研修を受けるほど、嘱望されていた銀行マンだった。
ワインといえば「マジュアン(韓国製のワイン)」しか知らなかったチョさんがワインオークションの仕事をするようになったきっかけは“偶然”訪れた。米国のワールドバンクで働きたいと思ったチョさんは、2000年7月、銀行に辞表を提出して進めていた米国留学に失敗した。
「留学するためもう1年準備するか」と迷っていた際、オークション会社の「ソウルオークション」に就職しないかと誘われた。銀行に勤務していた最中、中間精算してもらった退職金4000万ウォンで、オークションで絵を購入し、それを再びオークションに出すほど、普段からチョさんが絵のオークションに関心を持っていたことを知っていたからだ。
これをチャンスと感じたチョさんは、美術オークションの代わりに、国内ではまだ聞き慣れない「ワインオークション」に勝負をかけた。
「ワイン関連の原書を購入し、毎晩読みふけりました。50冊以上は読んだでしょう。しかしワインは理論だけでは習得に限界があり、今でも分からないことが多いというのが実情です」
チョさんはワインに対する「多くない」知識を、光る「アイディア」でカバーした。既存の「固いイメージ」の美術オークション会場の代わりに、ソウル・江南(カンナム)の清潭(チョンダム)洞、百貨店、ホテルのワインバーなど、大衆の中にワインのオークション会場を移したことが幸いし、ワインオークションの人気は徐々に拡大していった。
チョさんは「ワインには数十万ウォン以上する高価なものもありますが、2万から3万ウォンのワインもたくさんオークションに出されている」と話す。
チョさんは先日、ソウルオークションを辞め、フリーランサー宣言をした。ワイン、美術品、高級時計を扱うオークション会社を設立するためだ。オークション界で自らの“付加価値”を高める狙いのようだ。