歌手引退後初の映画『偉大なる遺産』に主演した任昌丁

 この俳優は決してコメディーのようには生きてこなかった。監督デビューを夢見て少しずつ書いてきた4本のシナリオの中に、コメディーは一つもない。それでも今、コメディーを演じているのは、大衆がそれを望むからだ。しかし彼はいつかは大衆を裏切るつもりだ。

 任昌丁(イム・チャンジョン/31)。映画をはじめ、ミュージカル、ドラマ、音楽などを通じて、代表的なマルチ・エンターテイナーの座についた彼が、『偉大なる遺産』(24日公開)で再びコミカルなキャラクターを演じた。

 高学歴の失業者チャンシク(任昌丁)がレンタルビデオ店で働くミヨン(金ソナ)と出会い、一攫千金を狙って事件に巻き込まれるという内容で、任昌丁は昨年大ヒットを記録した『色即是空』に続いて、哀れだが温かいコミカルなキャラクターを演じている。


 「忙しく、型にはまった生き方をするのが嫌いで、ぶらぶらしている人物です。世間や人間に対する不信感のためです。私の友人にプー太郎がいますが、そいつの髪型から性格まで、すべてを参考にしてチャンシクのキャラクターをつくりました」

 出演料をその友人に分けてあげなきゃと言うと、任昌丁はすぐさま「何を言ってるんですか!」ととぼけた。

 任昌丁は2カ月前に“歌手引退”を宣言した。 1990年の映諱w南部軍』のパルチザン役で芸能界デビューしたが、俳優生活は食べていくのがやっとの惨めなものだった。

 プロパンガスの配達員、ウエーター、工事現場の作業員など、次から次へとさまざまな仕事をしながら下積み生活をした任昌丁が、大衆の支持を得たのは意外にも歌手としてだった。10thアルバムまで発表し、成功した任昌丁がなぜ歌手を引退したのだろうか。

 任昌丁は「“不良品”をこれ以上、作りたくなかったから」と表現した。テレビ局をはしごしながら、仕事に追われるように歌を歌うのが嫌で、音楽と映画を中途半端にやって、どちらも失敗するのが怖かったという。

 「音楽は作詞、作曲だけではなくて、カラオケに行ったり、音楽を聴くだけでも楽しむことはできます。ところが映画は他人の作品を観てももどかしいだけです。映画に出て“ベストを尽くした”と嘘をつくのが嫌でしたが、これからは一つだけに集中すれば良いので気分的に楽です」


 任昌丁はプライベートを隠さない。芸能人になった後も苦しい生活の足しにしようと、プロパンガスの配達員やウエーターをやっていた時も彼は幸せだった。自分がプロパンガスの配達員の役を演じたら誰にも負けないという自信があったからだ。俳優としての任昌丁の最大の財産は“幸福論”だ。

 「誰かに『今幸せですか?』と聞けば、普通は『幸せになるために努力しています』と答えるでしょう。10年後、その人にまったく同じ質問をしても、また同じ答えをするでしょう。そうやって生きていたら一生幸せになることができないでしょう。私は今日、幸せになるため努力します」

 確かにコミカルな役ばかりを演じているが、任昌丁は真面目な俳優であり、映画監督を夢見ている。任昌丁のシナリオのひとつは、自伝的な内容だ。任昌丁は「私の人生も感動的なサクセスドラマにしたい」と語った。

 『偉大なる遺産』は最近の若年失業の反影でもある。プー太郎へのアドバイスを一言頼むと、「遊ぶことも経験」としながら「時間がすべてを解決するから、人生をあまり難しく考えないで」と語った。

朴敦圭(パク・トンギュ)記者
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c)Chosunonline.com>
関連ニュース