8日からスタートするSBSテレビの新しい水木ドラマ『殴れ』は、幼くして両親を亡くしても明るく生きる少女(シン・ミナ)が、反抗児と紳士の間で恋の駆け引きをして試練を乗り越えるといったストーリーだ。これだけを聞けばアニメ『キャンディ・キャンディ』とそう大差はない。
しかし、今回のヒロインはプロの女子ボクサーだ。コメディアンのチョ・ヘリョン(33)演じる主人公の友人役はさらに凄い。中小企業に勤める無能なオールドミスの中間幹部が仕事のストレスをボクシングで発散しようとジムを訪れるといった設定だ。
映画『反則王』で宋康昊(ソン・ガンホ)が演じた役を性別だけを変えてコピーした“女版反則王”だ。
『殴れ』の李ヒョンジクディレクターは「これからは何かを壊すことのできないドラマは成功できない」と語った。
「2~3年前までは『トレンディドラマはこうればヒットする』といった公式があったが、最近はそれが通じません。代わりに到底だめだと思ったドラマが突然ヒットしたりします。『屋根裏部屋の猫』、『前の家の女』など、最近の話題作をじっくりと見てみてください。素材だけが斬新というわけではありません。ドラマを観る“観点”やストーリー展開が既存のものとは特に違います」
もちろんドラマ毎の具体的なヒットの秘訣は少しずつ異なるが、話題作となる重要なテーマは“日常性”と“現実性”だ。
MBCテレビの『屋根裏部屋の猫』は、屋根裏部屋という庶民的な空間で展開される“同棲”という挑発的な状況をホームドラマのように描き、善男善女の運命的な愛を描いたKBSテレビの『夏の香り』を勝ち抜いた。
またMBCテレビの『前の家の女』は若くもなく裕福でもない30代の中産層主婦の不倫というダークな素材を、明るく軽快に描いた。
こうした現象は時代劇にも少しずつ現われている。『茶母』は主人公の職業や肩書きからして典型的な宮廷時代劇とはずいぶんと違う。王、王妃、後宮、政治家ではなく、現代で言うところの大統領の代わりに地方警察庁特別捜査課の女性刑事にあたる捕盗庁の茶母(ハ・ジウォン扮す)がヒロインだ。
男性主人公(金ミンジュン扮す)のヘアスタイルは、そのまま街中に立っても遜色がないほどに現代的だ。大人気の『大長今』もやはり、大統領府の栄養士にあたる御厨子所のナイン(李英愛(イ・ヨンエ)扮す)をヒロインにした。
王朝実録にある政治史をあれこれと変えて解釈する次元から一歩進んで、家父長制の王朝国家で王の面倒を見るナインが才能を発揮して“キャリアウーマン”として成功する過程を描いている。だからなお更、『大長今』が6日から同時間に放送されるSBSの伝統宮廷ドラマ『王の女』とどんな争いを展開するか、今から興味深い。