実存人物を描いた韓国映画が続々と登場

 安重根(アン・ジュングン)義士やプロレスラーの力道山など、波乱万丈の生涯を送った人物たちが、相次いで映画の主人公に選ばれている。

 非転向長期囚(韓国でスパイ罪などで摘発されたものの政治的転向を拒んできた長期囚)として知られる金ソンミョン、韓国初の女性パイロット朴敬元(パク・ギョンウォン)、極真空手家のチェ・ペダル(本名:チェ・ヨンイ)、プロ野球で敗戦処理投手だったカム・サヨンなど、実存の人物を主人公に制作中の映画が10本以上にも上る。

 『将軍の息子』、『酔画仙』など、過去にも実存人物を扱った映画はあったが、最近のように一度にブームを巻き起こしているのは初めて。これらの伝記映画は、日帝、敗北感、イデオロギー、男性優越主義などに立ち向かって全身でぶつかった人々を描き、重量感が感じられるのが共通点だ。

 韓国映画の新しい試みという点でも意義ある現象だ。映画評論家のチョン・チャニルさんは「歴史や伝記映画は、SF(空想科学)映画まで開拓した韓国映画が進むべき最後の未開の地」と解釈した。

 来年2月頃にクランクインする『力道山』は、現在日本側と投資に関する交渉が進められている。『力道山』を演出するソン・ヘソン監督は「リングという空間で生き残ろうと勝負欲を燃やした力道山のチャレンジ精神に心惹かれた」としながら、「本当の意味での勝負がない最近の人々に刺激を与えられるだろう」と語った。

 力道山役には薜景求(ソル・ギョング)がキャスティングされ、力道山関連の図書だけでも200冊以上も出版されている日本でのヒットにも期待が寄せられている。

 非転向長期囚の金ソンミョンの生涯を扱った映画『選択』(ホン・ギソン監督)は、現在、後半部分の作業を行っており、公開準備中だ。

 1970年代に“無等(ムドゥン)山ターザン”と呼ばれ、光州(クァンジュ)市民の偶像だった朴フンスクを映画化した『兄』(朴ウサン監督)は、現在約80%の撮影が終了しており、安重根の義挙11日前後を描いた映画は中国やロシアで撮影され、来年初めの公開を予定している。

 ニム・ウェールズのノンフィクション小説『アリラン』の主人公、金サンの生涯を描いた『アリラン』も宋康昊(ソン・ガンホ)をキャスティングして来年4月にクランクインする。また、李ヒョンスン監督は『あなたは遠い所に』、『コーヒー一杯』で知られる歌手の金チュジャを主人公にシナリオ作業を行っている。

 実存人物たちを映画化する傾向は、最近の韓国映画界の自信を反映しているという分析もある。ミョンフィルムの沈裁明(シム・ジェミョン)代表は、「今年に入って『殺人の追憶』や『薔花、紅蓮』などの成功で、韓国の商業映画の興行スペクトラムが広まった」としながら、「制作環境が向上して新たな挑戦に対する不安感が和らいだようだ」と説明した。

朴敦圭(パク・トンギュ)記者
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