開口一番、タレントデビュー10年目にして映画『スキャンダル』(10月公開予定)で銀幕デビューを果たしたペ・ヨンジュン(31)が、おかしなことを言い出した。インタビューで俳優が今年6月にクランクアップした映画の記憶をほとんど忘れてしまったとは。しかし「もうボケてしまったか?」と早とちりしたのは過ちだった。
「ドラマ撮影の時はまったく同じような台詞を100回ずつ覚えました。そのまま映画のロケに臨んだのですが、台詞はスムーズに言えたのですが、すべてが瓜二つの表情や動きになってしまいました。監督からもさんざん怒られましてね。それで決心したんです。『映画のロケの度に心を空っぽにしよう』ってね。そうやって毎回、心を空にしたら、今じゃ何も覚えてないんですよ」
ペ・ヨンジュンほどイメージが固定された俳優も珍しい。本人が言うように「ソフトで親しみやすいが、時には冷たい顔」というイメージを10年も守ってきたのだ。
テレビ番組に出演しないなど、私生活が徹底してベールに包まれたペ・ヨンジュンのことを、ある人は“鉄の城壁”という。ところが今回の初映画出演と共にその城壁が少しずつ崩れはじめた。
「1995年から昨年までにラブストーリーの映画出演のオファーを100回以上も受けましたが、すべて断ったんです。映画では今とはちょっと違うキャラクターを演じてみたかったので。時代劇に加え、コメディーやアクションも演じなければならない『スキャンダル』が自分にとってチャンスだと思いました」
『朝鮮男女相悦之詞』というサブタイトルの付いた『スキャンダル』は、18世紀の朝鮮を背景に、貞節を守ろうとする女(全度妍(チョン・ドヨン)扮す)と対立する妖婦(李美淑(イ・ミスク)扮す)と浮気者のチョウォン(ペ・ヨンジュン)の浮気者ぶりを滑稽に描いた映画。
チョウォンは科挙に合格してからも官職を捨てて女性ばかりを追う天下の浮気者だ。
眼鏡を外してまげを結んだ姿で2時間の映画『スキャンダル』に登場するペ・ヨンジュンは、見違えるように変わった。すばしっこくてずる賢いチョウォンに変身するためにダイエットをしたからだ。
鶏肉や野菜だけを食べて運動をして、2カ月間で9キロ減量した。関節に無理がかかるほどだったと言う。ペ・ヨンジュンは「相手のスタイルに合わせて変身したり、母性本能をくすぐるような弱い姿を見せるなどの演技をしながら、自分にも浮気者の気質があることを初めて知った」と語った。
ペ・ヨンジュンは一時、お金を稼いで留学に行くのが夢だった。自分のために何かを築いていく俳優らしく、彼は建築を勉強したかったという。しかし、仕事が忙しくなり、ファンも増えると、責任感と欲が出始めた。
「ファンを失望させたくなかったんです。正直、これまで“完璧主義”と言われるほど、自分を隠してきましたが、これからは自由に見せたいですね。“真実が最も大きな武器”だということが分かりました」
芸能界で生活しながら、ペ・ヨンジュンは自分の内気な性格を他人に気付かせまいとして無理してきたという。撮影が終わった後に「あ~、恥ずかしかった」と言うように。
彼は「『スキャンダル』は重荷だったこれまでのイメージを完全に捨てた映画だった」と振り返り、「来年は本格的なコメディー映画にも挑戦したい」と話した。
映画での経験が俳優の人生そのものまで変えてしまう場合が度々ある。
「白紙の状態で撮影に臨み、ファンと会う時こそ、本物の自分を発見するような気がします。本当に映画に惚れました。
できれば今後は映画だけに出演したいです」