「『お前たちにカニの味が分かるのか』というキャッチフレーズのCMが、あんなにまでヒットするとは思いませんでした。そのお陰でファン層が物凄く広がりましたね。小学生も私を見ては『お爺さん、サインしてください』と言ってきます」
KBS局舎のロビーで俳優の申久(シン・グ/67)さんが、こんな話をしていると、ちょうど20代初めの女性一人がちょこちょこと駆け寄ってきた。「すみません、写真一枚お願いします」と言っては、カメラ付きの携帯電話を取り出した。
小学生からお年寄りまで「老若男女みんなが好きな俳優」に、申さんほど相応しい人がまたいるだろうか?テレビ、映画、演劇で常に“現在進行形”で活躍する申久さん。そんな申さんが今度は演劇の舞台に立つ。
11~21日に公演される『問題的人間燕山』(李潤沢(イ・ユンテク)作・演出、国立劇場ヘオルム劇場)で、彼は燕山(ヨンサン)の父、成宗(ソンジョン)役を演じる。燕山が生母である廃妃尹氏の過去の悪事を知って復讐をする過程で、申さんは成宗の亡霊として現われる。
「決して多くの場面には登場しないが、燕山が起こす問題の端初を提供する人物です。シチュエーション・コメディーに出演してから私を好きになったファンが観たら、がっかりするかも知れません。今回は私の年に合った役で、少々シリアスな役なんです」
今回の公演は国立劇団の第200回目の定期公演。そのため国立劇団のベテラン俳優らが総出演する。張民虎(チャン・ミノ/79)、白星姫(ペク・ソンヒ/78)、オ・ヨンス(59)などが若い主演の燕山(李サンジク)と張緑水(チャン・ノクス/ケ・ミギョン)を支える。
申久さんは「李潤沢さんの演劇は正統のリアリズムではないが、破格なスタイルでパワーを得ることができて本当に好きだ」と語った。申さんは「常に新しいパワーが必要だ」と言う。
1962年に演劇『牛』でデビューした申さんは、60歳を過ぎてからも『民衆の敵』、『ファウスト』、『感じ、極楽のような』など、話題の演劇舞台に立った。正劇のみならず、ミュージカル『台風』や歌劇『涙の女王』にも出演した。
最近、シチュエーション・コメディーやCMで見せたイメージは、冷めない彼の情熱がそのまま現れているだけだ。
申さんは「年を取っても柔軟に生きようと努力してみると、一番大切なものが健康だということが分かった」と言う。「1週間に3~4日は、近所の土手を8キロほど歩いています。
しかし、何よりもこの年まで力強く頑張れることができる健康な体で生んでくれた両親に、ただ感謝するばかりです」