『オー!ブラザース』で12歳の少年を好演した李凡秀

 道がない時、ある人は道を作りながら進んで行く。忠武路(チュンムロ/韓国映画の中心地)デビュー13年目の俳優、李凡秀(イ・ボムス)は、初めの7~8年間は誰も憶えていないような脇役ばかりを演じた。

 その後、『日が西から昇るなら』や『太陽はない』などの助演でその実力を認められ、『ジャングル・ジュース』からは主演として活躍している。

 5日に公開される『オー!ブラザース』を通じて李凡秀は、長年一人で歩んできた急斜面を上り切り、ついに広く真っ直ぐに伸びた新しい道に出たようだ。この映画で早老症にかかった12歳の少年ボングを演じた李凡秀は、決してオーバーになり過ぎず、溢れんばかりの痛快な演技で、観客に愉快な笑いと温かい感動を与える。

 「ボング役は私に“ユニークなプレッシャー”を与えました。演技者なら誰もが演じにくいし、しかも生半可には取っ付き難い役なので、カメラの前に立つ度に試験を受けている感じがしました。でも、私の演技には満足しています。ベストを尽くしましたから。二度とこれ以上の演技をやりこなせないでしょう」

 謙遜にしてもインタビューで「今作品の演技には満足している」と言う俳優はあまりいない。しかし、李凡秀は言い切った。それは自分で道を切り開きながら長らく歩んできた人間特有の過去に対する自信でもあった。

  『オー!ブラザース』で李凡秀は、ボング役を演じ切るために小学校4年生の教室を度々訪れた。李凡秀が住む論峴(ノニョン)洞のハクドン小学校に通う子供たちの登下校時の姿を一週間以上も綿密に観察もした。

 脇役時代から共に働いてきたある制作者は李凡秀について「真面目で積極的だった。印象に残っているのは脇役でも物凄く堂々としていたこと」と語った。李凡秀は「正直、当時は認めてもらえないことに対する悔しさがあった」としながら、「愛着がわかなくて自分が出演した映画は観もしなかった」と語った。

 忠武路で脇役時代を経て主演俳優として活躍している感想を聞くと、李凡秀は「若い奴がちょっと豪快にものを言ってみるとすれば、一生懸命やれば結局はこうなれると思った」という返事だった。

 「脇役時代にいつかは思いっきり演技することを夢見ながらも、私には似た過程を踏みながら成功した役のモデルがなかったので、尚更、闘志を燃やしました。それが私だろうと他人だろうと、こういう人間が成功するのを見たかったんです」

 多少オーバーに見える李凡秀の自信は、もしかしたらマンネリズムに陥ったスターシステムの沼を渡り切るための“櫓”のようなものだったのかも知れない。

 李凡秀は独自のコミカル演技でお馴染みだが、「私はコメディーは演じても、無闇やたらと笑わせるような映画は一本もなかった」と自負した。李凡秀はここ数年間、大ヒットしているヤクザ映画の数本からオファーを受けたが、すべて断ったとしながら、こう語った。

 「一体、何を伝えたいのかが分からなかったんです。単純なエピソードを並べるだけで、意味のないユーモアだけだったから。まったく繋がりがないのに、決まったある時点では笑わせなければならないから、意味もなく可笑しなことをして無理矢理に笑わせて…」

 当初、「俳優としてコンプレックスを感じる部分は何か」と聞こうとした質問を変え、「コンプレックスなどはありませんよね」と聞いた。

 彼は、「無名だった当時は身長がコンプレックスだったんですが、今はまったくない」とし、「自分の持っていないものを嘆いているには、持っているものでやることが多すぎる」と話した。

 「演技は最高の人間探求の学問」と考える彼は、「これからはカリスマのある演技をしてみたい」と言った。

 「最近はカリスマという言葉が乱用されていますが、私自身、その人の存在を認識させる力だと理解しているんです。これまでは主に素朴で、純粋な青年を演じてきましたが、近く、演技においての狂気やパワーのことで私のことを語り合う日が来るはずですよ」

 彼の言葉は、もう一つの「自己実現的予言」のように思えた。今、彼は真っ直ぐに伸びた道の真中から、側の草むらへと飛び下り、もう一つの道を作り出そうとしている。

李東振(イ・ドンジン)記者
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