元S.E.Sのパダが夢のミュージカルデビュー

 元S.E.Sのパダが初めてミュージカルの舞台に立つ。9月19日から10月23日まで、ポップコーンハウスで公演する創作ミュージカル『ペパーミント』(李ユリ作、クォン・ホソン演出)がそのデビュー舞台だ。

 彼女の演じる役はある家を彷徨う幽霊のトジュ(南京柱(ナム・キョンジュ)扮す)と悲しい恋愛をする女性歌手。劇中での名前も同じく“パダ”だ。

 ミュージカル女優、パダの素顔は一体どんなのものだろうか。26日、大学路(テハンノ)にある稽古場を訪ねたが意外だった。

 そこにはS.E.Sで笑顔で軽快にダンスを踊り、甘いバラードやダンスナンバーを聴かせた歌唱力のある可愛らしいアイドルスターの姿はなかった。

 フロアでは歌と人生に苦悩する一人の女性演技者 パダが、喉が張り裂けそうな声で歌い、台詞を吐いていた。

 稽古中だったのは、「売れる歌を歌いなさい」というは劇中に登場する所属事務所の社長の指示に対して、「聴くものの魂を揺るがす歌を歌いたい」と絶叫するシーン。ヒロインの心境が込められた曲を歌うパダの目頭が忽ち赤くなる。演技への集中力は十分だった。パダに “演技”について語ってもらった。

 「実は高校(安養(アニャン)芸術女子高校)の時の専攻が演劇だったんです。夢は演技者でした。人気タレントになりたいといった少女的な夢ではネく、映画女優になりたかった。私は綺麗な方でもなく、どちらかといえば、少々ワイルドだったんです」

 創作ミュージカル『ペパーミント』は“幽霊”との美しい恋物語という点もユニークだが、主人公の女性歌手が華麗な舞台以外の日常で経験するアイデンティティに対する苦悩が、観るものを釘付けにする。歌手でもあるパダとしては、まるで自分のことのようだ。

 「劇中のように、一緒に働く人たちと争いになることはありません。ある相手との葛藤ではなく、『私の歌が果して私自身が選んだ音楽だろうか』と自問して、心の中で葛藤をすることは度々あります」

 このミュージカルは、世の中のすべての人が羨望の眼差しで見るスターも、独りになれば苦悩や寂しさを経験するのだと語る。幸せそうに見えるスターのパダも、「私も生まれた時から家が経済的に苦しくて、大変な時期が多かった」と打ち明けた。

 「演劇に没頭していた高校時代には、私の教育費のために国楽人の父が夜な夜な酒場の舞台に立つ姿を見て、本当に申し訳ないと思っていました。苦しくて死にたいと思ったこともあった。ところがS.E.Sのメンバーになった時は、私も“お金持ちの家の娘”のような気分になりました」

 「それでもS.E.Sデビュー前の冬に行われた合宿の時には、いまだにお湯を使うことができない両親のことを思い出して私も水でシャワーを浴びました。あの頃の夢は『両親に温かいお湯でシャワーを浴びてもらう』ことでした」(笑)

 パダは「私がずいぶん苦労を経験しましたから、恵まれない人々を助けるという心で毎日を生きている」と話した。

 「そのつもりで、魂を癒す歌を歌います。どんな歌であれ、真心を込めて歌う。楽しいリズムの曲の時も、何も考えず歌うことはありません。悲しい歌詞なら、最大限に感情を静めて…」

 「だから、歌いながら泣いてしまったこともたくさんありました。こうして、魂を込めて歌を歌うと、誰かの心に伝わるんですよ。そうやって、疲れ切った誰かの心を慰めることができれば、それが魂を癒すことになるんじゃないんですかね」

 パダはこの1年間、すべての活動を取り止め、レコーディング作業にだけ励んだ。そんな彼女が、なぜアルバム作業も終わらない中に、ミュージカルに目を向けたのだろう。

 「一つ、夢があったんです。私は韓国のアルバム市場がこんなに厳しい情況に置かれたのには、いとも簡単に歌を作って発表しているかのように見られていることにも原因があると思うんです。でも、ミュージカルは歌手が一つの歌を歌って世の中に発表するまで、本当に辛い日々が必要なんです。

それをファンに知ってもらえたら、情況がこれ以上悪化することはないのではないか、と思うんです」問い合わせ:(02)399-5888

金明換(キム・ミョンファン)記者
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