「追憶の漫画屋をもう一度」 漫画博士の金応秀さん


 「昔、幼年時代の私たちが楽しんだ、そんな漫画屋を一軒作りたいです。漫画だけを売るのではなく、トッポッキ(餅の辛味噌煮)や駄菓子、焼き芋なども売り、父に見付かっては叱られた思い出が詰まった、そんな漫画屋です」

 利益だけを追求するのなら、到底理解できないような仕事をする人がいるが、漫画収集家の金応秀(キム・ウンス/47)さんも、そのうちの一人だ。金さんの本業は美術品や骨董品の取引業者。しかし、金さんの名刺には「韓国漫画資料院」という本業とは無関係な肩書きが書かれている。

 金さんは来月14日まで、ソウル市内の世宗(セジョン)文化会館で開かれる『追憶へ』という展示会で、約200冊の昔の漫画を展示している。

 金さんのブースには『鉄人28号』、『消しゴム博士』、『洪吉童』など、40歳以上の人にはお馴染みの漫画が主に並べられている。その中でも『大野望』、『ロボットチッパ』、『バーベル2世』、『虹の行進曲』などの漫画や『ロボットテコンV』、『黄金の羽123』、『鉄人007』など、386世代(60年代に生まれ80年代に大学に通った現在30代の人を指す言葉)の郷愁を誘うアニメポスターの数々が目を引く。

 子供の手を引っ張りながら展示会場を回る若い親たちは、『黄金バット』、『未来少年コナン』の主題歌が流れると「私がお前くらいの時に聴いた歌」と言いながら足を止めて一緒に口ずさむ姿も見られる。

 金さんは10年前に金庚彦(キム・ギョンオン)の『医師カブリ』(1965年作)を初の所蔵目録に加えて以来、現在まで全国津々浦々を回って約1万冊以上の漫画本を集めた。

 金さんは「初めは単に子供の頃を思い出して趣味程度で始めたが、そのうち使命感を感じるようになって辛くても放棄することができなくなった」とし、「なんとなく『自分みたいな人間も必要だ』と思って始めたことだったが、日増しに大きな意味を持つようになった」と語った。

 自ら強調しなくても金さんの所蔵している漫画の数々は、それ自体が韓国漫画の歴史だ。収集した漫画は表紙をスキャニングし、出版年度や作家名を併記してパソコンで管理している。

 金さんは現在、1950年代の漫画の整理を終え、1960年代の漫画の書誌目録を作成中だ。金さんは「1960~70年代は漫画に対する社会的認識が低く、紙も貴重な時代だったため、当時の漫画は即、廃品回収行きとなった」としながら、「記録はあるが、本を確保できない漫画が非常に多い」と残念そうに語った。

 金さんの夢は昔の漫画を展示し、読むこともできる「追憶の漫画屋」を作ること。

 世宗(セジョン)文化会館の展示場の片隅に、そのような彼の夢を垣間見ることのできる空間が設置された。

 昔の漫画屋を連想させる3坪たらずの空間に漫画を陳列し、彼はまるで昔の漫画屋の主人がそうであったように、長閑な表情で展示場を訪れるお客さんを迎えている。

 金さんは「漫画を歴史として学び、それでいて楽しめる博物館型の漫画屋にしたい」と語った。

金泰勲(キム・テフン)記者
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