帽子のキャンバスに花を咲かせる朴ウンジョンさん

 カジュアルな帽子を被って爽やかに笑っている朴ウンジョンさん(59)の本業は建築家だ。弘益(ホンイク)大学で建築を専攻後、30年間は二人の子育てに余念がなかったが、たとえフリーとはいえども、本業の建築を疎かにしたことは一度もなかった。

 そんな朴さんの心を最近、動かしたものがある。来年には韓国の年で還暦を迎える朴さんを、少女のように夢中にさせたものは“絵”だ!しかも、スケッチブックではなく帽子に描く絵だ。

 「画家になりたかったのですが、志を果たすことができませんでした。子育てから解放された後、暇を見付けては野外スケッチに出掛けると、高校生の頃に戻ったような気分になります。なぜ帽子に描くのかって?それは単純に娘の影響からです」

 朴さんの娘、金ジョンウンさん(31)は、ロックグループ「天地人」でシンセサイザーを弾く演奏者で、弘益大前に集まるライブ好きなら誰もが知っている有名人だ。30が過ぎても結婚する気はなく、ライブか編み物だけに熱中して、週末ともなれば公園前で開かれる弘益大前名物のフリーマーケットで編み物の店を出す。

 「娘が鈎針で帽子を上手に編むんです。色々と編んで売っている姿が楽しそうだったので、私も加わることになったわけです。品目が同じでなければならないので帽子をキャンバスにしているだけで、素材は私が大好きな野生の花を選びました」

 だからといって朴さんの帽子のことを暇な主婦の悠長な趣味くらいに思われては困る。まず作品一つを完成する過程が格別だ。

 15年来の趣味である登山に行く度に帽子と絵の具を必ず持って行き、写真ではなく、実際に目の前に咲いている花を、その場で帽子に描くのが朴さんの鉄則。「そうしてこそ、帽子の上で花が生きているように感じられるから」という。

 「写真の中に固定された花を写し取るのは気が進みません。太陽が燦々と降り注ぐ野原、ちょっと風が吹く中、幸せそうに揺れる花々に語り掛けるように絵を描く瞬間こそ、本当の幸せを感じます。また、そんな努力と痕跡を理解してくれるお客さんだけが、私の帽子を選んでくれます」

 その作品の一部は、希望市場側が8月初め頃に、公園の近くに設置した常設展示場『希望ギャラリー』で、31日まで展示されている。1個当り3万ウォン、計51点の作品のうち、半分以上が既に買主が決まっている。

 娘の着古したTシャツに花を描き入れたところ、娘が大感動して以来、帽子とセットでTシャツ作品も生産している。これもまた陳列され次第、瞬く間に売れ行く。

 一時、朴さんは人生を黄金期を過ごしていると喜んだ時期があった。ブーツに、破れた服をわざと縫いで着たり、長い髪をそのままにして歩いた弘益(ホンイク)大学時代。朴さんは60才近くなった今、もしかしたら母校の前で第2の黄金期を迎えるかも知れないと言って、楽しそうに笑った。

 「そろそろ秋だから、紅葉を描かなきゃね。赤い紅葉がパラパラと落ちるような帽子、どんなに素敵でしょう。

今からドキドキします」問い合わせ:(02)337-8837

金潤徳(キム・ユンドク)記者
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c)Chosunonline.com>
関連ニュース