「(他の人々が)整形手術をしてプロダクションを訪ねている間に、公演一本で実力を養っていく」と覚悟を決め、世界30カ国でストリートパフォーマンスを行うため旅に出る若者たちがいる。
チョン・ソンフン(27/ソウル芸術大学映画学科)、朴テソン(25/中央(チィンアン)大学演劇学科)、シン・ジヒョン(25/ソウル芸術大学文芸創作学科)、チョン・ジング(25/ソウル芸術大学映画学科)、朴ジヘ(22/ソウル芸術大学舞踊学科)がメンバーの「ボントビプロジェクトチーム」。
彼らは大学で演劇や映画、舞踊、文学を専攻する芸術系の学生だ。
聖書の『創世記』から付けられた「ボントビ」というチーム名には「2003年、芸術家に生まれ変わる」(2003 Again Born to, Be)という意味も込められている。
チーム長のチョン・ソンフンさんは「大学に通いながら演技や台詞に苦悩するよりも一日も早くスターになることを夢見る人が多かった」とし、「邪道と思われるかも知れないが、旧態依然とした韓国の芸術界に一石を投じたいと思ってプロジェクトを計画した」と語った。
チョン・ジングさんは「(他の友人のように)何もせずにプロダクションからお呼びがかかるまで待ち続けるような生活はしたくなかった。受身の姿勢で私を選んでもらうのではなく、演技やこれからの人生を準備しなければと思った」と参加の動機を語った。
彼らは海外公演のために韓国伝統のマダン劇(野外劇)などからヒントを得た台詞のない即興劇を準備している。下手な外国語を使った公演よりは感情や内容が遥かに伝えやすいと判断したからだ。
『公無渡河歌』、『亀旨歌』、『赤壁歌』『黄鳥歌』などの伝統詩歌の内容を劇化し、愛や苦しみといった普遍的な感情を公演場所の雰囲気によって即興で演じるつもりだ。
最近は10月初めの海外公演を控えての追いこみ練習に追われているという。先月からは、京畿(キョンギ)道・安山 (アンサン)の稽古場で合宿をしながら一日8時間以上、稽古に励んでいる。
プロジェクトをスタートさせ、伝統打楽グループ「ToDAG」の李サンジン団長、イリ農楽履修者の朴ヒョンスン氏などから指導を受けた四物(サムル)ノリ(韓国古来から伝わる4種の打楽器で演奏すること)は、今ではリズムに乗って演奏できるほどの実力になった。
チョンさんは「国楽を専攻したわけではないので、多くの面で至らない部分もあるが、演奏者が楽しければ観客も同じように楽しめると思う」と語り、自信をのぞかせた。
プロジェクトを始める頃から、李サンジン伝統打楽グループ「ToDAG」団長や朴ヒョンスン・裡里(イリ)農楽履修者などに習ってきたサムルノリ(四物ノリ/韓国固有から伝わる四種の打楽器で演奏する音楽)は、今や“自分で楽しむ”ほど腕が伸びた。
チョンさんは「国楽専攻者でないためまだ下手だが、演奏者が心から楽しむと観客も楽しくなるはず」と、自身あり気に話した。
劇団や職場、所属会社、学校などをやめて旅に出る彼らを「愚かだ」という人も多いという。役ひとつを取るのも大変だというのに、せっかく入った演劇、映画への出演依頼も受け入れず、職場や予定されていた舞踊公演などを諦めての旅なのだ。
彼らは、いくら険しい道だとしても芸術家としての道を諦めないため、「自分の壁を破り」、「自分ならではの色を探しに行く」と語った。
チョンさんは「最初は10人のうち10人全部が『無謀だ』と反対したが、今はうちの5人は賛成に回った」と微笑を浮かべた。
「舞台上での自由」を求めて旅に出るという彼らは、芸術家なら一度は行ってみたいと思うような「アートロード(art road)」を作りたいという。
朴テソンさんは「世界の著名な芸術家から街頭公演家に至るまで、多様な人々に会い、韓国文化を知らせ、彼らのノウハウを学んでみたい」とした。
来夏、フランスのアビニョン・フェスティバルや、英国のエジンバラ国際ファスティバルなどにも参加する計画だ。
彼らの荷物は簡単だ。チャング(鼓の一種)や手持ち鉦などの楽器と公演衣装が全部だ。生活必需品と旅行費用は、現地での街頭公演で賄う計画だという。
しかし、彼らは「最も心強い準備物を持っていく」といいながら笑った。「韓国若者の覇気と芸術に対する熱情を持って行きます」と。