「どこまで脱いだかという考えは捨てて、映画に入り込んでもらえれば幸いです。そして記者の方々も『ヌードになることに抵抗感はなかったか』という質問はこれ以上、ご遠慮いただければと思います」
先月29日に行われた『浮気をした家族』の初試写会で舞台に立ったムン・ソリが、こう前置きしたのは無理もなかった。今年のベネチア映画祭のコンペ部門への参加が伝えられるまでは、この挑発的な映画のヌードシーンだけに関心が集中していたからだ。
14日に公開されるこの映画でムン・ソリは、夫の浮気を黙認しながら高校生と浮気をする人妻、ホジョンを演じる。
「ヌードシーンについてはあまり話すこともないのですが、しきりに取り上げられるので私も少しうんざりして、ああいう前置きをさせてもらいました。実は映画の撮影当時も、そういった面だけがクローズアップされて報道されたので、撮影場所の交渉も、イメージが壊れると拒否されることが多かったんです」
しかしムン・ソリは「私自身がホジョンとは違ってオープンなタイプでもなく、あまり率直な方でもなかったので悩んだのは事実」と打ち明けた。
しかし、舞踊劇『白い蝶の悲鳴-アイゴ』を観て、悩みは吹っ切れたという。「全裸の動作を見た瞬間、心配する自分が幼稚に思えた」というムン・ソリは「演技者の意図と姿勢が明轤ゥなら、観客も他の見方はしないだろうという確信が生まれた」と語った。
そのためだろうか、『浮気をした家族』でムン・ソリの演技は確かに心と体の壁を軽く越えている。
ムン・ソリはインタビューで質問されると、自分の性格をまず説明した後、質問に答えることが多かった。
「自分が無難なせいか、多少目立つ役が好きなようです」と答えた時のムン・ソリは、無難というよりは好き嫌いがはっきりした性格のように見えたし、「私は内向的なので心配も多いんです」と話を切り出す時のムン・ソリは、むしろ堂々としていて積極的に見えた。
インタビューの間中、率直でユーモラスなムン・ソリを眺めながら「本当のムン・ソリはどんな人なのだろう」と思った。もしかしたら「本人が知るムン・ソリ」と「他人が知るムン・ソリ」の間のどこかにあるものが、彼女の演技の基本的な原動力になっているのではなかろうか。
まだ公開前にも関わらず、ムン・ソリはすでに50件以上のインタビューをこなした。
「映画がクランクアップしてからも、ずいぶん長い期間、配給会社や公開日が決まらなかったんです。人気女優が出演していたら、もっとスムーズに解決しただろうと考えると、急に申し訳ない気持ちになりました。女優はこういうことまで兼ね備えていなければならないと悟りました」
「今からでもインタビューで大衆性を養って、映画に少しでも役立てばと思うばかりです。ところで、なぜこの映画の最前線に服も着ないまま、旗を持って立つようになったか分かりません」
ムン・ソリは『オアシス』で障害者の女性を演じ、身をよじらせながら演技したのに続き、再び『浮気をした家族』での果敢な演技で話題を集めている。見た目よりもイメージが先行するしかない女優人生に照らした時、もしかしたら強気の選択ばかりしているのではなかろうか。
これについてムン・ソリは「シナリオが良く、新しい映画という確信が持てても、イメージだけにこだわってそれを諦めるのなら、むしろ女優としておかしいのではないか」と問い返した。「それほどまで計算的になることが果して正しいのか、逆に疑わしく思います。人生は計算どおりなるのでもないでしょう」
ならば次はどんな作品に出演するのだろうか?
「忠武路(チュンムロ/韓国映画の中心地)に貢献できる女優にならなければと思います。とりあえず、映画祭とは関連のなさそうな作品に出演したいです」
「えっ、必ず出てみたい映画ですって?それならあります。『12歳以上観覧可の映画』です。私の出演映画はすべて『18歳以上観覧可』でした。
学校の先生をしている友人が、生徒たちをたくさん映画館に連れて行くことができると言っていたので、私もそろそろ、そういう姿を見たいと思います」