「観客の笑顔が見たい」 名司会者の金ジェドンさん

 近頃、汝矣島(ヨイド)で金ジェドンほど多忙なコメディアンも珍しい。オーバーな動きや強引な演技は一つもなく、自分の話術だけで客席を沸かせる伝統的なスタンドアップ・コメディが彼の持ち味だ。

 ある日、金ジェドンが女性客に「恋人はいませんか?」と尋ねた。女性は笑顔で「はい」と答えた。金ジェドンが「なぜいませんか?」とさらに聞くと、彼女は「分かりません」と答えた。すると金ジェドンは「なぜ分からないのですか?私はパッと見て分かったのに…」。客席から自然と笑いがこぼれる。

 金ジェドンは「コメディアンではなくMCと呼んでほしい」と何度も念を押した。軍隊を除隊後、10年近く大学の学園祭の司会者やプロ野球サムスン・ライオンズのホームグラウンドのMC、または番組収録前に雰囲気を盛り上げる前座として生計を立ててきた。長い無名時代を経て、金ジェドンは人をけなさずに客席を笑わせる術を身に付けた。



 昨年、ユン・ドヒョンバンドの地方公演中に機材の故障で曲が中断した際も、金ジェドンはすぐさま舞台に駆け上り、怒りが頂点に達した観客を持ち前のトークで爆笑させ、雰囲気を和ませた。

 その後、金ジェドンはソウルの地上波テレビ局の舞台に進出した。永登浦(ヨンドゥンポ)の旅館でソウルでの生活を始めてちょうど8カ月目、深夜のバラエティ番組のレギュラーの座を手に入れた。

 金や名声を得ても、金ジェドンは常に初心だ。もっと欲を出してもいいはずだが、金ジェドンは汗を拭いながら「私はすでに子供の頃の夢を実現しているんです」と語った。

 「稼いだお金で母に30坪のマンションを買ってあげて、ソウルに保証金5000万ウォンの自宅も手に入れました。これだけあれば、一生暮らしていくのに十分ではないでしょうか。

これからも思う存分、観客を笑わせたいです」

長興(チャンフン)=金秀恵(キム・スヘ)記者
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