南北分断に焦点当てる同い年の小説家2人 

 「脱北者(朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を脱出した住民)たちに会って垣間見た北朝鮮の実体は、北朝鮮住民たちの考えがかなり断絶されているということです。私は訪朝使節団とも胸襟を開いて話し合いたいのです。非常に胸が痛み、怒りが込み上げてきます」(金ジョンヒョン)

 「分断国家の住民であり作家として私は、われわれが政治的に非常に複雑なジレンマに陥っていると思います」(金辰明)

 ベストセラー小説『父』の作家、金ジョンヒョン(46)さんが今週、分断問題と脱北者たちの状況を扱った小説『道のない人々』(全3巻、文以堂)を出版した。

 今週はちょうど停戦50周年記念日を迎えた週でもある。現在、中国に在住しながら執筆活動をする金ジョンヒョンさんが『道のない人々』出版に合わせ、しばらくソウルに滞在し、以前から会いたかったという小説家の金辰明(キム・ジンミョン/46)さんと対談した。

 親しみやすい文章で数百万人の読者を抱える2人の金氏は、共に1957年生まれで、分断問題と政治状況を男性的なドキュメンタリー形式で扱う中堅作家として“同じ道”を歩む。

 「今回の私の小説は、北から南に越えて来た対南工作員の北の娘(ジスク)、そして北朝鮮に抑留中の国軍捕虜の息子(ジャンヒョク)が北朝鮮を脱出後、祖国を目指して流浪する話です」(金ジョンヒョン)

 しかし、小説の中でジスクとジャンヒョクの2人は、結局祖国の地を踏むことはできず、第3国に向かう悲惨な運命を辿ることになる。

「私は現代史を素材にした小説を書く時、名誉毀損の訴訟に充分対応できるだけの資料、裏付された調査があれば、実名が遥かに説得力があると思います。実名を用いた強固な事実性を容認することができるだけ、韓国も民主化されました」(金辰明)

 元刑事というユニークな経歴で話題を集めた金ジョンヒョンさんは、小説『父』を通じて、韓国の現代社会と家族問題を感動的に描き出した。以降『前夜』、『道のない人々』といった小説で、現代史と南北分断の問題を本格的に掘り下げている。

 金辰明さんは90年代最高のベストセラーといえる『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』をはじめ、『皇太子妃拉致事件』などの作品を発表し、現在は世明(セミョン)大学の教壇に立っている。

 金辰明さんは韓半島の核問題や国内外の政治、経済状況をドキュメンタリーに近い実名、あるいは“準実名小説”として描き出している。金辰明さんは「政治的ジレンマ」と表現した理由を説明した。

 「何が何でも親米であるべきというのが、現在を生きるわれわれの宿命です。その反面、米国の利益がいつも南北共通の利益に符合するのではないという事実がジレンマを生み出しています」(金辰明)

 両金さんは中国で個人的に経験したエピソードを交え会話を続けた。しかし現在の韓半島情勢や北朝鮮の体制を見つめる作家的観点には、かなりの差異があった。

 「私は過去5~6年間、北朝鮮に対する政策が民族主義的な名分でもって推進されてきたが、結果的には統一の障害になったと見ています。北朝鮮は金日成父子体制が転覆されない限り、何も解決しません」(金ジョンヒョン)

 しかし金辰明さんは、イデオロギーに先立ち自我実現を優先視する“オープンな愛国”を強調した。「私が小説の中で具現したいのは、特定階層を代弁するイデオロギーではなく、自我を実現し、社会全体を統合できる“オープンな愛国”です」(金辰明)

 金ジョンヒョンさんは「“58年戌年生まれ”が集まるように、これからは“57年酉年生まれ”も団結してみよう」とジョークを投げた。

 金辰明さんは「米国のキャンプデービッド(米大統領専用の山荘)を盗聴する内容で、米国の本音を掘り下げる小説を準備中」とし、金ジョンヒョンさんは「中国五千年の歴史を文化史的に探る勉強をして、今後人生のパラダイムに適用されるだろう根幹を究明したい」と語った。

金グァンイル記者
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