全智賢「『猟奇的な彼女』に閉じ込められたくはない」

 全智賢(チョン・ジヒョン)は今、大韓民国で最も勢いのある女優だ。

 昨年12月に朝鮮(チョソン)日報がアンケート調査を行った結果、忠武路(チュンムロ/韓国映画の中心地)の映画制作者らは、全智賢という名前だけで66万人の観客動員が可能だと口を揃えた。俳優、女優の中で韓石圭(ハン・ソッキュ)と共に最も高い数値だった。今年に入っても全智賢は、各調査で1位を記録している。

 全智賢が映画『4人用の食卓』で帰って来た。韓国をはじめアジア各国の映画館街を席巻した『猟奇的な彼女』の大成功以来2年ぶりだ。

 人気絶頂にも関わらずCM以外の活動をしてこなかった全智賢だけに、尚更注目を集めている。ところが『4人用の食卓』はスリラーだ。この作品で全智賢は霊能力を持つ神秘的な女性を演じる。

 「私の演じたヨンは、自分では必要としない能力のために苦悩するキャラクターとでも言いましょうか。演じながらいつも、ヨンは背中の細い紐がどこかに繋がれている人物だと思いました。それがどことも知らずに、必死でそこに頼る女性です」

 ロマンチック・コメディー『猟奇的な彼女』にキャスティングされて脚光を浴びた全智賢としては、意外な選択だった。

 「シナリオは面白いと思いながらも、私には合わない役だと思った」という全智賢は「ところがある瞬間から、そんなことを考える自分があまりにも殻に閉じこもっているという気がして、思い切って勇気を振り絞った」と語った。

 今までに出演した4本の映画の中で、ファンが全智賢といって思い浮かべる作品は、実際のところ『猟奇的な彼女』1本、そして何本かのCMしかない。しかしファンは優秀だ。スターに要求するイメージだけを見出すからだ。

 しかし、そのイメージの魅力は充分に味わったから、インタビューの後半で彼女の本心を少し探ってみるのも悪くはないだろう。見えるように意図されたものと、見えないように隠されたものとの間の緊張も味わいながら。

▲全智賢はセクシー?=女優にとっては、とてもありがたい言葉です。むやみに拒むこともできないし、嬉しくもありますし…。でも自分で言うのはちょっと図々しい感じがします。一度もベッドシーンを撮ったことがないのですから。CMの影響力が大きかったようです。

 (実際に全智賢はセクシーというよりは、か弱そうに見える。それでもセクシーに見えるのが女優の魔力だろうか)


▲全智賢はダンスが上手い?=そうですね…。実は私、あまりダンスが好きじゃないんですよ。ただ、CMの撮影の時、モデルとしてコンセプトを上手く生かしているとは思います。リズムに乗るのは上手いと言われるんですがね。(全智賢はこれまでダンスを習ったことも、友たちと踊りに行ったこともないという)

▲全智賢は明るい性格だ?=はい、そうです。(インタビューの前、彼女の知人数人に聞いたところ、内気な性格だと言われたのに?) 行動や発言において、慎重になる性格だからそう思われるみたい。幼いごろからこの仕事を始めたからか、責任意識が強い方なんです。

 外で時間をつぶすのは嫌いですね。家にいるか、何か習い事をすることが多いです。(3年前に彼女をインタビューしたことがある。人見知りがひどく、新人だからだと勝手に思っていたが、今回もそうだった。彼女から“素質”を見出し、ベストセーリングのイメージに作り上げた“天才”は誰だったのだろう)

▲全智賢はCMがメーン舞台だ?=そんなことを言われると、気分が悪くなりますね。実際、恥ずかしいとも思います。女優として、時間を無駄使いしているのではないか、とも思いますし。ただ、それと同時に、CMが短時間で自分を最も上手く表現できる媒体であるのも事実なんです。それを通じて自分をアピールすることもできますしね。

 (全智賢は気恥ずかしい時は、決まってトレードマークとなっているワンレングスの髪をかきあげる。CMの話をする時、彼女は何度も髪をかきあげた)

▲全智賢は変身を試みている?=いいえ。まだ歳も若いし、経歴もまだまだこれからなのに、変身なんて…。今回、スリラー映画を選んだのは、ただ、自分の前に来たチャンスを活用してみたかっただけです。

 『猟奇的な彼女』以降、人気は急上昇しましたが、そのすべての称賛と人気を片方で流し捨てて行きたいと思うんです。今、自分を取り巻くすべてのものが消え、本当に一人になるその瞬間のために、今それらに流されたくはないと思う。常に、自ら足りないと思いますし、常にそれを埋めていこうと努力しますね。

 (「映画だけを長く続けていきたい」と話す全智賢は、「今は上手くなくても、人が認めてくれるまで、そして、自ら満足するまで、続けていきたい」と話した。そんな彼女が“表”の称賛は片方で流し捨て、“内”の自責は心に刻んでいきますように。

そして後日、観客はセクシーで溌剌したイメージで始めたが、重量感のある演技で大業を成し遂げた一人の女優を誇れる日が来ますように)

李東振(イ・ドンジン)記者
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