短髪に黒のスーツと黒光りした靴、片耳にはインカム姿とくれば、どんな職業かだいたい想像はつく。彼は誰かの命を守るボディーガードだ。
KBS第2テレビの週末ドラマ『ボディーガード』に出演中の映画俳優、車勝元(チャ・スンウォン/33)が2日午後、ソウル市・汝矣島(ヨイド)で警備会社のボディーガード4人と会った。全員が4~12年の経歴を持つベテランだ。
ごろつきから大統領府のボディーガードに生まれ変わる役を演じる車勝元が、本物のボディーガードたちに聞いた。「本当にいつも黒いスーツだけを着ているんですか?なぜですか?」
▲黒いスーツは威嚇する時に着る=この日集まったボディーガードの中で、最もベテランのユン・ムンギ(36/ジュンヨンセキュリティー代表取締役)さんは「黒いスーツは依頼人を狙う者に“メッセージ”を伝えたい時に着る」と短く答えた。
“メッセージ”とは、イコール「触ったらケガをする」という意味だろう。この業界で認められるためにはテコンドー、柔道、合気道、特攻武術などの段を合計して最低10段は必要だ。
▲ボディーガードにも「人間の欲求」がある=たとえばボディーガードもトイレに行きたい時があって、長時間立ちっぱなしの時には足も痛くなる。それでも有無を言わず、無制限に堪えなければならない。
集まったボディーガードの中で最年少のウォン・ジョンミンさん(26)は「軍の警護部隊に服務中、大統領府のボディーガードを遠くから目にして“オーラ”を感じた」としながら、「実際ボディーガードになってみると、好きな時に食事もできず、腹が鳴ったことが一度や二度ではない」と語った。
そのため彼らが移動に使う黒塗りの車には、三段警棒、スタンガン、無線機と並んでパン、牛乳、カップラーメンが山ほど積まれた箱がある。
黒いスーツにサングラス姿のボディーガードたちが、フルスモークの車内でせわしくパンにかぶり付く姿を想像して笑う車勝元。これにボディーガードたちは「警護会社の入社試験の際にまず目にした言葉が忍耐」と一喝した。
▲時にはこんなモノまで守る=ボディガード歴7年目の朴ミンジョンさん(27)がミスコリア選抜大会の警備を担当した時のこと。
あるミスコリア候補が悲鳴を上げた。「着替え用のブラジャーが見当たらないんです。今しているブラジャーを貸してください!」
清純可憐なイメージで人気急上昇中の20代前半の女性タレントを警護した時。エレベーターのドアが閉まるや、この女性タレントはきわどい言葉も交えながら、ある男性タレントとの密会についてマネージャーに話し出した。
朴ミンジョンさんは「依頼人の非常にプライベートな部分をかいま見ることになるが、影のように警護するだけで口外することはない」と語った。
▲小競り合いが起きたら「失敗」=経験豊富なボディガード60人を擁するこの警護会社の中でも、金ギョンモさん(27)は“A級専門要員”と呼ばれる。
“A級”とはこの世界で使われる用語で、脅迫どころか、生命の危険にもさらされる段階、例えば私たちがやくざ映画で見慣れた刺身包丁、鉄パイプ、ジャックナイフなどの小道具が飛び交う実戦状態を指す。
金さんは「実はそうした状況を未然に防ぐのがプロ」と語る。小競り合いが起きたらすでに警護に「失敗」したことを意味する。
この説明には、車勝元も開いた口を塞ぐことができなかった。