台湾出身でハリウッドで活躍するアン・リー監督は『ウェディング・バンケット』、『いつか晴れた日に』、『アイス・ストーム』、『グリーン・デスティニー』など幅広いジャンルで才能を発揮してきた映画監督だ。
『ハルク』の封切りを前に監督に電子メールでインタビューした。
―なぜ夏の大作に挑戦したのか?
「夏の大作だからといって、必ずしも単純化する必要はないということを示したかった。大作特有の特殊効果を最大限に生かしながらも、いわゆる『アン・リー・タッチ』と呼ばれる『関係と感情に対するドラマチックなタッチ』も捨てなかった。私はこの映画を基本的に心理ドラマと思って制作した」
―これまで父と子の関係をモチーフに数々の映画を撮ってきたが、『ハルク』もまたしかりだ。
「シナリオがうまく進まず悩んでいたある日、脚本を書いたジェームズ・シェイマスが父にまつわるエピソードを複合的に処理しようと提案してきた。その瞬間、『また父と息子の話か!』とも思ったが、『まさしくこれだ』という感覚の方が強かった。しかし、もし新たに父と子の話を扱うことができなければ、このようには撮らなかったろう」
―コンピューター・グラフィックでハルクを再現する際に最も重視した点は?
「色と質感だ。ハルクは緑色なのでおもちゃのように見えやすく、リアルに見えるようにするため苦心した。質感を出すことにも気を使った」
―映画の制作過程で最も大変だったのは?
「映画の規模が大きくなる分、問題も大きくなるようだ。『ハルク』の場合、原作コミックの世界と写実的なドラマを織りまぜるのに苦労した。自己主張を曲げない俳優の間で台詞を調律するのも本当に大変だった。
だが視覚効果の面では大満足している」