「韓国の大衆音楽が滅茶苦茶になるほど、誰も牽制しませんでした。90年代に入ってから衰退し始めた“アーティスト中心の音楽”を再び始めるのです」(シン・ヘチョル)
今月17日の夕方、ソウル市・堂山(タンサン)洞のPTSスタジオ。全仁権(チョン・インクォン)、韓栄愛(ハン・ヨンエ)、ポムヨルムカウルキョウル(春夏秋冬/金ジョンジン、チョン・テグヮン)、金ジョンソ、シン・ヘチョル、金ヒョンチョルの7人のアーティストが集まった。
25日午後7時30分から、オリンピック公園・平和の広場で行なわれる大型コンサート『No More War』のリハーサル最終日だった。残りのメンバーの李文世(イ・ムンセ)、李銀美(イ・ウンミ)、李スンチョル、李鉉雨(イ・ヒョヌ)は、個人的な都合で参加しなかった。
コンサートは李銀美の舞台を皮切りに、各アーティストが20分ずつ公演し、最後に全員でフィナーレを飾る予定だ。
これらの大物アーティストらは最近、「これ以上、音楽界をこのままにしておくことはできない」としながら、『テンプラス』というプロジェクトを発足させ、同名の企画会社も設立した。全10組のアーティストが集まり、このプロジェクトを率いてきた金ジョンジンが代表を務める。先日、全員で歌った曲『No More War』を発表した。
トップレベルのアーティスト10組が集まっただけでも、彼らの動きに注目が集まっている。「私たちで、コンサートも行なってアルバムも出す」と言い出すと、公演企画会社や各レーベルも注目し始めている。
「20年以上も音楽をやってきましたが、気に入らないことが多かった。公演は量的にはかなり増えましたが、レベルが落ちました。打算的な考えで公演に関わろうとする人も多いです」。ドラム担当のチョン・テグヮンの言葉だ。
全仁権がロッカーなら、李文世はポップスとバラード専門だ。実験音楽に夢中のシン・ヘチョルと“アウトサイダー”の韓栄愛もまったく違った音楽スタイルだ。何が彼らを一つにしたのだろうか。
「自分の音楽性を持ち、自分だけの言葉で話すことのできる人には共通点があります。歌を“職業”にする人たちだから…」。兄貴分の全仁権は「私にヒッピーの気質があってか、メンバーたちに会えば楽しくて仕方ない」と語った。
『テンプラス』は今回の公演収益金の全額を「愛の家造り運動」に寄付することにした。また、夏のビーチコンサートや年末助け合いコンサートも計画している。「ハイレベルな外国人アーチストも招待する」というのが彼らの抱負だ。
問題は、企画や経営に疎い彼らが果たして市場に乗り出して成功できるかどうか。
「マドンナは『マヴェリック・レコーズ』というレーベルを持っていますが、帳簿をつけているわけではないでしょう。経営は専門家に任せて、私たちは公演企画やプロデュース業を担当します」とはシン・ヘチョル。
早速、「私も入れてほしい」という要請が殺到している。ダンスや口パク一辺倒で『音楽』より『産業』が重視されてきた歌謡界に、『テンプラス』は目下、新風を吹き込んでいるところだ。
金ジョンソは「集まって話をしてみると、メンバー各自がそれぞれ孤独な思いをしていた。“打算”なしでこうして集まったことが一番大切だと思う」と語った。
歌謡界の期待も大きい。1990年代に入り、途切れてしまった韓国歌謡の“命脈”を、『テンプラス』が受け継ぐことを期待する向きもある。
大衆音楽評論家のイム・ジンモ氏は「テンプラスのメンバーは1980~90年代の歌謡界を席巻しながら、90年代を経て、活動の場を失った人たち。こうしたメンバーの力を合わせれば、公演の大型化やプログラムの多様化が期待でき、新しい流れを作り出せるのでは」と語った。