『殺人の追憶』出演で人生が大どんでん返し 朴ノシク

 ヒット映画『殺人の追憶』は、一演劇俳優の人生を変えた。劇中、精神異常者として無実の罪に問われ、列車にはねられて死亡するペク・グァンホを演じた演劇俳優の朴ノシク(32)だ。

 朴ノシクは演劇生活10年間で一度も主演したことがなく、ある劇団では7年間で一度舞台に立っただけという“完全な無名”だった。

 しかし、映画の中の朴ノシクの演技は、瞬く間に人気を得た。ファンサイトも誕生し、会員は3000人を超えた。27日からは、映画の原作となった演劇『私に会いにきてください』(金光林(キム・グァンリム)作・演出)のアンコール公演に出演する。

 弱々しくて純朴で頼りない田舍青年そのものの朴ノシク独特のルックスは、映画ファンの視線を釘付けにする武器になったが、長年の間、そのルックスは弱点であるだけだった。

 「嫌悪感を誘う顔のせいで、悔しい思いをしたことが多かったです。銀行のATMでお金を下ろそうとしたら、警察官に身分証明書の提示を求められたり、町内の人たちに変質者が住んでいると通報されたこともあります。喫茶店でアルバイトをしようと面接に行けば、もう決まったと言われますし…。それで工事現場やキムチ工場で働きながら名ばかりの俳優をやってきました」

 朴ノシクは「『殺人の追憶』のヒットで得た最大の成果は、演劇界からお呼びがかかったこと」と喜んだ。

 「今までは劇団を直接回って出演させてもらえるよう頼んでいましたが、一回もオファーを受けたことはありませんでした。ところが今一番話題の演劇からお呼びがかかるなんて…。本当に幸せで、まるで夢を見ているようです」

 アンコール公演される『私に会いにきてください』で朴ノシクが演じる役は、容疑者(リュ・テホ)の友人だ。たった7分間の1シーンで、やたらに騒ぎ立てるだけの端役だが、映画の中のペク・グァンホのように、非常にインパクトのある役だ。俳優の李デヨンが96年にこの役で百想(ペクサン)芸術大賞の新人演技賞を受賞した。

 朴ノシクは、この10年間の恨みを晴らすかのように、この役に成りきっている。『私に会いにきてください』の他の出演者たちは、朴ノシクを指して「あれほど真面目に一生懸命練習することはできない」と舌を巻いた。

 一時は顔がコンプレックスだったが、今では違う。「この顔のおかげでペク・グァンホ役にキャスティングされましたし、演劇でも私がどんな俳優かを見せられるようになりました。

これから朴ノシクは演技派俳優になりますよ」

李圭鉉(イ・ギュヒョン)記者
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