映画『チューブ』の朴尚民「5年ぶりに真剣に演じた映画」

 「『チューブ』は刑事映画ではなくディザスター映画です。映画の核心であるモチーフが地下鉄テロで、そのテロを起こしたのはカン・ギテクというテロ犯ですが、単にテロを阻もうとする刑事が登場するだけです。私はこの作品が“朴尚民(パク・サンミン)の映画”だと思います」

 これが俳優の自信感だろう。56億ウォンを投じた映画『チューブ』で、元国家機密機関のエリートだったが国から捨てられ、ソウル全域をパニックに追い込む地下鉄テロ犯として登場した朴尚民の言葉にてらいはなかった。

 この映画は金錫勲(キム・ソクフン)、ペ・ドゥナが主演だが、朴尚民はテロ犯「カン・ギテク」役に対して強い自信を見せた。

 「映画の中で最後まで抑え続けた感情をクライマックスで爆発させるかについて、最後まで抑えろという監督と意見が分かれました。結局は監督の指示通りになりましたが、その判断が正しかったと信じる他ありませんでした。抑え続けた怒りが、私の目から火になって現れるんです」

 朴尚民は「ただ、編集されてから見てみると、テロを起こさなければならなかったカン・ギテクの心理がしっかりと描写されていないようで惜しい」と付け加えた。

 「朴尚民の悪役演技」について質問すると「テロを起こすが、観客の共感を得ることができる魅力的なカリスマを持った役なので、自分は悪役だと思わない」という答えが返ってきた。

 「キャラクターが明らかなカン・ギテクという役は、どんな役者でもやりたいと思う配役です。映画『将軍の息子』シリーズで長い間、固定されたイメージから脱することができるだけの強力なキャラクターです。それで5年ぶりに映画に戻りました」

 本人は5年ぶりと言うが、1998年の映画『男物語』以降にも『口笛姫』にも出演したはずだ。これについて朴尚民は「個人的な付き合いのために出演したが、撮影が進むほどにまともな演技ができる環境が整っていなかったため、演技を“放棄”した作品なので私の映画だとは思わない」と、歯に衣着せずに説明した。

 朴尚民はインタビューの最後まで率直な言葉を続けた。スーツのような上着に破れたジーンズ姿のファッションが、そのまま映画の中で作られた彼の姿と自由な現実の姿の共存を証明しているようだった。

 朴尚民はスターとして役者人生をスタートさせた。オーディションを受け、19歳の時に林権澤(イム・グォンテク)監督の『将軍の息子』(1989年)の金斗漢(キム・ドゥファン)役で絶大な人気を得て、役者人生の第一歩を踏み出した。

 最初から大きな人気を得たせいか。映画界での経歴14年のベテラン俳優となった朴尚民は「人気は信じていない」と言い切った。

 「私と酒を酌み交わしたことがありますか。話したことがありますか。ファンは有り難いと思っていますが、正直言って、うわべだけを見て好きになってくれたんです。『将軍の息子』で得た絶大な人気も、結局は自分のものではありません。誰があの役をやってもそれだけの人気を得たはずですから」

 14年前のスクリーンデビュー作の配役がいまだに大衆の心に残っていることについて、どう思っているのだろう。

 「まあ、負担ではありますが、同時に幸福ですよ。しかし俳優にとって、誰もが思い浮かぶ代表作があるということは非常に光栄なことではないですか。どうせ『将軍の息子』のイメージは一生、付きまとうんですから」

 栄光と限界、自分のものとそうでないものを明確に知っているこの役者の次回作が楽しみになった。

李ドンジン記者
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