その男は、すべてを話し終える前に言葉を遮った。一瞬、いぶかしく思った。この遠慮のない男が、最近のドラマ『雪だるま』でコン・ヒョジンの礼儀正しいボーイフレンドを演じていた人物と同じなのだろうか。
6月2日からスタートするMBCテレビのドラマ『屋上部屋の猫』(金サヒョン演出、ミン・ヒョジョン、ク・ウンギョン脚本)の主人公、金レウォン(22)だ。
「こんな性格が隠れていたのかと思うくらい、自分にとっても新しい発見です。徹底して厚かましくて、無神経で無責任な“チンピラ司法試験受験生”です。スタッフがその度に驚きます。自分がこんな演技をするとは思わなかったって」
ドラマの中で演じるこの図々しいキャラクターを、金レウォンは普段の生活の中でも再現していた。「役を演じているうちに、友達に会ってもドラマに登場する“チンピラ司法試験受験生”のギョンミンのキャラクターが飛び出します。でもそんなに憎たらしくはないでしょ?」
今まで演じてきた真面目で思慮深いキャラクターとは一線を引いて、金レウォンは上手く適応していた。
「撮影の前に原作のインターネット小説を先に読んだのですが、本当に面白かったんです。その瞬間、これだと思いました。ところが実際にシナリオを見てみると、自分の台詞がとても多いんです。それで決心しました。全体の流れだけを頭の中に叩き込んでおいて、その場その場で出てくる自分の言葉を使おうと」
この“快男児”の戦略は的中しているようだ。愛を確認する前にどさくさに紛れて同棲を始めた「浮気者の司法試験受験生」と「生活力のある倹約家の女性」を主演に設定したこのドラマで、男性主人公の即興性と瞬発力は、成敗の鍵となるからだ。
金レウォンは「ドラマに出演する前は体重が80キロでしたが、1週間で5キロ痩せた」としながら「いつも以上に全力投球している」と目を輝かせた。
最近ブラウン管に登場した新人だと思っている視聴者も多いが、実は金レウォンのドラマ出演歴はすでに7年目だ。
江原(カンウォン)道・江陵(カンヌン)の出身で、中学の時にバスケットボールの特待生として上京した。そして、中学2年生の時に父親の友人のCM監督と知り合う機会があり、制服のCMでデビューを飾った。
『順風(スンプン)産婦人科』、『学校2』、『私の愛パッチ』など、これまでに登場したドラマだけでも20本以上になる。出演依頼の多い最近は、大学も休学して演技に全力投球している。履歴書には中央(チュンアン)大学演技学科休学中と書かれている。
「次の学期には必ず復学しなさいという柳仁村(ユ・インチョン)教授の命令が下りました。勉強と両立させたいのですが、中々簡単ではないですね」
彼の髪の毛が一瞬、風になびいた。「もうすぐこのヘアスタイルが “金レウォン・パーマ”という名前で流行するでしょう」と冗談を飛ばすこの快男児を、憎むことはできそうもない。