麻薬スキャンダルを克服し、『チャンピオン』をタイトルトラックにした3rdアルバムでカムバックを果たした「PSY」(本名:朴チェサン/26)。
知る人ぞ知る彼の姉、朴チェウンさん(29)は、昨年、ある料理雑誌が調査した「2002韓国飲食業界に話題を提供した人」のトップに選ばれたフードスタイリストだ。
この存在感があり情熱的な娘と息子を持った両親の朴ウォンホ(53)、金ヨンヒ(53)さんは、「PSYママ」、「朴先生のお父さん」と呼ばれるのが負担で仕方ないという事業家夫妻だ。
「4人とも全員、胸に燃え上がる火の玉を抱えて生まれた」というチェウンさんの言葉通り、寅年が三人も集まるこのパワフルな一家は「離れていても心は一つ」を合言葉に、それぞれの個性のままに、互いを尊重しながら呼吸を合わせる21世紀型ファミリーだ。
まず夫婦の組み合わせからしてユニークだ。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)から越南し、自力で成功した父親の事業を受け継いだウォンホさんは、何があっても朝食は必ず摂らないと一日が始まらないという保守的な一家の大黒柱。
ほぼ毎日、客をもてなさなければならない事業家の家に嫁いだヨンヒさんは、夫はもちろん、義理の両親の面倒にも誠心誠意を尽くす反面、子供の教育に限っては自由奔放な今時の主婦だ。
父から48年間続く家業を受け継いで夜も眠れない夫に「大丈夫よ、あなた。潰れたら、私がクッパ屋を開いて何とかするわよ」と言って勇気付けるほどの器の大きいヨンヒさんは、経営学を学んだ息子が突然歌手になると言い出し、言語学者を夢見ていた長女が突然、料理を学びにパリに行ってしまった時も驚きはしなかった。
「勉強ができるよりも世の中をうまく渡り歩いて行く頭が必要だからです。実家の暮らし向きが突然悪くなって、病床に倒れた母の面倒のために大学を中退した時、可愛がって育てるだけじゃなく、世の中を生き抜く力がなければ駄目だって悟ったんです。二人の子供が自分の希望で進路を変えるというのに、それをやめさせる理由があるでしょうか?その代わり、責任は100%自分が負って、失敗したら今までの自分の人生も水の泡なるって脅かしたんです(笑)」
大学を卒業するまで通知表をチェックされたことはなく、「勉強しなさい」と怒られた記憶もない姉弟は、互いの仕事について干渉はしないが、決定的な瞬間には「ズバリ斬る」アドバイスを送る仲だ。
あちこちで料理コラムを掲載している姉に「ちょっと誇張しすぎじゃないの」と皮肉ることができるのも、大衆心理を察知するのがうまい弟しかいないし、「今度の曲には個性がない」と痛烈な指摘ができるのも、料理を芸術に昇華するためなら徹夜もいとわない姉だけだ。
チェウンさんは「振り返ってみると、PSYや私をここまで頑固にしたのは、互いの優劣を比較せず、自分だけの才能を探す大切さを教えてくれた母」と笑った。
夫婦間にも「離れていても心は一つ」の精神は生きている。
はたから見れば30年間、夫と子供のために自分を犠牲にしてきたように見えるが、ヨンヒさんは50歳を過ぎてその分を取り戻した。
ファッションデザイナーを目指したヨンヒさんを引き止めた夫に出した条件は「いつか自分の作品を作れるように、私だけの空間を持たせてほしい」。
3年前、清潭(チョンダム)洞にオープンしたフュージョン日本料理店を軌道に乗せ、6月はじめには「プチ・シーズンズ」という韓国料理店を開店するヨンヒさんは、夫が友人を連れてきても料理代はしっかりもらうほど、公私混同に厳しい。
2年前の麻薬事件は家族のきずなをより強くした。
「世間勉強だと思いなさい。これよりひどいことをしたとしても、お前を信じていたよ」と握手を求めた父、事件の2日後に亡くなった義父の葬式で奔走しながらも、息子のことは一言も口にしなかった母は、PSYが9カ月後に再起を果たすのに最大の支えとなった。
この家族にとって、放任は信頼の裏返しなのだ。