カクテルの後味から香ばしい麹の香りがする。しかし、意外にさっぱりとしていて、すっきりした味わいだ。
ロッテホテル蚕室(チャムシル)店のロビーラウンジのヘッドバーテンダー、李ソクヒョン(41)さんが作った伝統酒カクテル「赤い悪魔」だ。
アルコール度数40度の強い「南漢山城」ソジュ(韓国の焼酎)に、山イチゴの原液と梅ジュースを交ぜて作る方法は一見簡単そうだ。
しかし、このメニュー1つを完成させるために李さんは、ソジュ、マッコルリ(濁り酒)、蛇酒、梅ジュースなど、韓国伝統の飲み物を使って試行錯誤を繰り返し、完成までに3年以上もの時間を費やした。
初めて作ったのは2000年6月の「蛇酒カクテル」だった。南北首脳会談で朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に対する関心が高まったのを機会に、ヒットさせてみようという考えだった。ところがバーの客に披露した時の反応は完全に“空振り”だった。
「一日に1人か2人は注文すると思いましたが、一度飲んだお客さんが二度と頼まず、非常に惨めでした。北朝鮮の酒はきつくて粗悪なので、カクテルというロマンチックな雰囲気とは合わないのに、それに気付かなかったんです。販売して間もなく、メニューから消すはめになりました」
この時から体系的に「伝統酒カクテル」の作り方を研究し始めたという。ちょうど放送通信大の農学課程を終え、夜間大学院の東国(トングク)大学・産業技術環境大学院に在学中だった。李さんはロッテ、インターコンチネンタル、ルネッサンスの3つのホテルの客を対象に、伝統酒カクテルの味を試す実験をした。
色、味、香り、アルコール度数別にそれぞれテストシートを作成し、客の年令と国籍によって何が好きかを調査した。こうして多くの人の口に合う伝統酒カクテルに近付けていった。
この研究で翌年の2001年、『伝統民俗酒を利用したカクテルの開発』という論文で食品工学修士の学位を得た。
その後は理論を元に伝統酒カクテルを地道に作り続けた。完成しては客や専門家など10人ほどに味見をさせてテストを行った。こうして今春までに5種類の伝統酒カクテルを完成させ、再びメニューに載せることに成功した。
「赤い悪魔」の他に、梨薑(イガン)酒(ナシとショウガの酒)と梅ジュースを交ぜた「ハート・トゥ・ハート」、梅の原液を使った「エメラルドビーチ」、ヤマブドウ酒とトックリイチゴ酒を交ぜた「オンギジョンギ(デコボコの意味)」、トックリイチゴ酒に洋酒のチェリーブランデーを交ぜた「紫光の夕焼け」などだ。
「カクテルは欧州の飲酒文化ですが、だからといって欧州の人たちの方法をそのまま真似るのは正しいとは思いません。あの有名な『セックス・オン・ザ・ビーチ』は日本で開発されたカクテルです。韓国の伝統酒を使ってヒット商品を作るのも不可能ではないはずです。世界各地で愛されることになれば、韓国の伝統酒の輸出も増え、一石二鳥ですしね」。
▲伝統酒カクテル「赤い悪魔」の簡単レシピ
(材料:南漢山城ソジュ30ミリリットル、トックリイチゴの原液15ミリリットル、梅ジュース60ミリリットル)
1.カクテルグラスを用意。
2.シェーカーに氷を4、5個入れる。
3.材料を順にシェーカーに入れ、7、8回ほどよく振った後、カクテルグラスに注ぐ。